過去ネタ発掘隊の成果発表
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【イマイチだった話】虹色のプレゼント
虹色のプレゼント
森のずっとずっと奥に手のひらほどの小さな妖精たちの、小さな村があります。
妖精たちは、風を操って空を飛びます。
それに、妖精が『大地にお願いする歌』を歌いながら願うと、普通の糸でも粗悪な糸でもつやつやで虹色に光る糸になり、歌がうまければうまいほどより美しい虹色になるのです。
妖精たちが森の奥で暮らしているのは、そんな不思議な力を持つ妖精たちを捕まえようとする人間たちから隠れるためです。
ある人は観賞用に。
ある人は金持ちに売りつけるために。
ある人は虹色の糸欲しさに。
みんな理由はそれぞれですが、みんな同じように妖精を傷つけました。
「人間を信じてはいけないよ。」
いつも村のみんなは口を揃えてそう言います。長い間ずっと生きる妖精たちは、仲間たちがされたことを覚えていてずっと人間を許してはいないのです。
そして、その村の中で唯一、外の世界を知らない妖精がいます。
妖精たちが人間から逃げるためにこの村に住み始めてから生まれた彼女は、人間で言う十歳くらいの見た目で、村の中で一番小さいのでみんなから『ミニ』と呼ばれています。
ミニは一度でいいから村でも森でもない外の世界を見てみたいと思っていて、日が暮れて雪が止んだ時にこっそり村を抜け出したのです。
ミニが初めて見た人間の世界はきらきらしていました。
夜道もお店も木までもが光っていて、ミニはきれいだと思う反面、日が沈むと眠る妖精たちの村にはない夜の明るさが少し眩しいと思いました。
ミニは人間に気づかれないように大通りに並ぶお店の屋根の上を飛びながら進みます。
ミニは、まだ下手ですが少しだけ風を操って着ているローブでバランスをとることでゆっくりですが空を飛ぶことができるのです。
ずっとずっと進んで雪が降ってきたころ、ミニは広場の上空にたどり着きました。広場は人間でいっぱいです。
広場の真ん中にある大きな木は飾り付けられていて今まで見た景色の中で一番美しいとミニは思いました。
ミニが見とれていると、強い風が吹いてきてミニは飛ばされてしまいました。強い風はミニには操りきれなかったようです。
飛ばされたミニは地面に落ちてしまいました。積もった雪があったおかげで怪我はしていませんが、落ちた先は人間の足元でした。
ミニは慌てて飛ぼうとしましたが、着ていた暖かいローブはどこかへ飛ばされてしまったようで、飛ぶことができません。
ミニは寒さと不安のせいなのか、からだの震えが止まりませんでした。
「ねえキミ、どうしたの。」
そんなミニに十二歳くらいの人間の少女がしゃがんで話しかけてきました。
『ミニ、人間を信じてはいけないよ。人間なんて私たちに酷いことしかしないのだから。』
『人間は私たちの仲間をペットとして売ったのよ。』
ミニは周りのみんなが言っていた言葉を思い出しました。
この少女もみんなが言うように酷いことをするのでしょうか。見極めるためミニは少女をじっと観察します。
「寒いなら家で暖まって行きなよ。歓迎するよ。」
少女はそう言ってミニの前に手を差し出してきました。
どれだけじっと観察してもミニにはこの少女が悪いことをしてくるような人間には見えなかったので、ミニは少女の手に乗るとマフラーの中に入りました。少女は周りの人に気づかれないように、こっそり連れて行ってくれました。
ミニは少女に案内されて用意されたおもちゃのソファーに座りました。
ミニには少女が用意した、少女にとっては小さく、ミニにとっては少し大きな陶器でできたおもちゃのコップに入ったココアと、コップと同じ模様のお皿に入ったクッキーのかけらが出されました。
ミニはココアもクッキーもおいしいので気に入りました。
ココアとクッキーを楽しみながらミニは少女と話をし始めました。
少女はサラという名前で、ココアが大好きな女の子です。サラは広場に遊びに来ているところだったようです。
飾り付けられた大きな木は、クリスマスツリーというもので、クリスマスという日のために飾ること、クリスマスはプレゼントがもらえる日で、今日がその日なのだとミニは教えてもらいました。
ミニは古い大きな靴下が椅子にかけられていることに気づきました。その靴下はサラの足よりもずっと大きいものでした。
ミニがその靴下のことを聞くと、靴下の中にプレゼントを入れてもらうようです。
サラに教えてもらった代わりにミニは村での暮らしと、空から見た景色の美しさについてと、子どもの妖精はローブがないと飛べないことと、『大地にお願いする歌』の難しさを語りました。
クッキーも食べ終わり、お腹もいっぱいになりました。ミニはそろそろ帰らないといけません。
「妖精なんて物語だけの存在だと思っていたけど本当にいたんだね。」
「人間ってみんな悪いことしかしないって聞いていたけど、優しい人もいるんだね。」
サラはミニにクリスマスプレゼントとしてローブの代わりにやわらかいハンカチを渡しました。これならなくしたローブの代わりになりそうです。
ミニは椅子にかけられた古い靴下に『大地にお願いする歌』を歌いました。
古かった靴下は虹色に光りました。
「ミニ、ありがとう。」
サラは嬉しそうに言いました。
「サラ、ありがとう。」
ミニは隅に雪の結晶が刺繍された白色のハンカチを羽織ってサラにもらった安全ピンで留めると、サラにお礼を言ってから風に乗って飛び立ちました。
「サラを信じてよかった。」
ミニは森へ向かいながらそう言いました。
雪は冷たくても、サラの優しさが詰まった雪モチーフのハンカチは、いつまでも温かいままミニを包み続けました。
過去ネタ発掘隊の成果発表 Me @Me0623
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