第13話:たぶんスズは俺の愛する大切な相棒。

「スズ・・・すまなかった・・・おまえには心配のかけどうしだったな」


「ほんとにバカだよ・・・心配したんだよ」

「でも、お父さんが犯人じゃなくてよかった」

「ちゃんと罪償って、まっとうな人間になって帰ってきてね」

「出所してきたら地味でもいい・・・ちゃんと働いて人に迷惑かけないで」


「分かった・・・おまえの言う通りにするよ」

「で、スズ、おまえ今までどうしてるんだ?・・・ちゃんと食べてるのか?」


スズは俺を指差した。


「今はこの人のお世話になってる・・・」


「スズのお父さん、スズの今後のことは俺がかならず面倒見ます」


「ああ、あんたは・・・俺と妻の離婚のとき奔走してくれた探偵さんだろ?」


「覚えてくれてましたか?」

「縁あって、お嬢さんと知り合うことになりました 」

「これも何かの縁でしょう」

「スズには今、俺の仕事を手伝ってもらってます」

「心配せず、安心して罪をつぐなってきてください」


「娘のこと、よろしくお願いします・・・」


面会終了の時間が来て、スズは親父にお別れを言って俺と警察を出た。

もう陽は西に傾きかけていた。


「スズ・・・終わったな・・・おまえの親父が犯人じゃなくてよかったよ」


「ヨーちゃん、ありがとう」

「どういたしまして・・・でもまさかこんな事件に遭遇するなんてな・・・」

「さ〜て帰るか・・・また明日からふたりで猫探しだな」


「ねえ、私ずっと探偵事務所にいていいの?」

「なに、今更・・・パートナーなんだろ?俺たち」


「そうだけど・・・・あのさ・・・」

「ほんとうのパートナーになりたいって言ったらどうする?」


「なに言ってんのおまえ・・・」


「しょんべん臭い私じゃだめかな」


「だから、なに言ってんだよ」


「私ヨーちゃんのことが好きだよ」

「このさい歳の差は関係ないから・・・」

「ヨーちゃんはぶっきらぼうだしワルぶってるけど、拾った子猫、捨てられ

ないタイプでしょ?」


「そりゃ俺だってスズのことは好きだよ・・・でもそれはズズの性格と俺の

相棒として好きって意味だからな」


「そうだな、おまえがあと10才歳食ったら彼女にしてやってもいいかな」


「え〜10才も歳取ったら、おばさんじゃん」


「あのな、おまえの歳に対する感覚はどうかしてるぞ?」


「おまえが10才歳食ったら27だろ・・・27とか30ってのは女の盛りだぞ」

「女として油が乗り切った一番いい時期じゃねえか」


「そんな10年も待てないよ・・・お魚と一緒で女も若い方がピチピチして

いいんだよ」

「それに私、もう親の承諾なくてもできるよ」


「・・・・・・」


「あのな、そういうドキッとするようなこと言わないでくれないか?」

「俺も一応、男だからな・・・一瞬だけど妄想しちゃっただろ」


「いい・・・もう帰るぞ・・・乗れ」


「可愛いね、このスクーター」

「スクーターじゃなくて、こいつはオリーブ」


そう言うと俺はオリーブのエンジンをかけながら言った。


「・・・スズと同じだよ・・・俺の大事な愛する相棒だよ」


「えっ、今なんて言ったの?」


俺とスズは明日からまた雑貨屋のばあちゃんの猫を探すことになるんだろうが、

もう屍体は見つけないでほしいかな。


つづく。

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