シン・織姫と彦星
たってぃ/増森海晶
第1話
この世で一番偉い神様――
娘である織姫と
織姫こと
そして
天帝がこの
働き者の二柱をくっつけて互いを想いやる気持ち――すなわち【愛】を知ることが出来れば、自然と
「ダ~リン☆」
「マイハニ~♪」
だが現実は、周囲を顧みないゲロアマバカップルの誕生である。
お互いの目をハートマークにして、毎日ラブライフ状態の二人は、仕事そっちのけてデート! デート! デート!
仕事漬けの毎日だった反動から、ハメを外しまくって、デートのあとはめちゃくちゃオセッセ……(ゲフッ)
仕事?
ナニソレおいしいの?
仕事至上主義ではなくなった
だが、それがいけなかった。一応このバカップルは、産業を担う神様だ。
必要最低限の仕事しかしなくなった結果、天界の繊維業界と精肉業界は大打撃。
天帝が着る服も、好物のステーキも貧相なものになってしまい、周囲はかわいそうなものを見る目で天帝を見る。
その結果が、
「いやああああああ。ダーリンっ!?」
「ハ、ハニーッ!!!」
恋人たちを引き裂く天の川。
天帝によって生み出された川は、絶対的な力で、織姫と彦星を隔てる自然の壁となった。しかも、この川には天帝の意思が働いており、織姫と彦星が単体で向こう岸まで渡ることは不可能というチートである。
これで一件落着かと思ったら、
「さみしい、死にたい」
織姫は鬱になった。
「
彦星も鬱になった。
理不尽に引き離された織姫と彦星は鬱になり、ますます仕事をしなくなるという悪循環に陥った。
だから天帝は条件を出す。
以前のように真面目に働いたら、七夕の日に会うことを許す。
しかし、その日に雨が降ったら、天の川が
だったら、なんで自分たちを引き合わせた!
織姫と彦星――天帝によって結ばれ、そして、理不尽に引き裂かれた、悲劇の運命に
天帝は気づいていない。
【シン・織姫と彦星】
「天帝、お逃げください」
「ぎゃあああああああっ!!!」
「鬼、鬼の大群が」
「一体、なにが起こっているんだぁっ!」
天帝の屋敷を襲撃する、頭部に二本の角を生やした異形の集団。
彼らは無双ゲームのように天帝の屋敷を荒らしまわって、そして去っていった。
幸い死傷者は出なかったものの、残されたのは、無残にも破壊された屋敷のみ。
台風一過の惨状の中で、織姫の姿がいないことに気づいた天帝は、いやな予感を覚えて、屋敷の敷地内にある娘の職場へ駆け込んだ。
「!!!」
職場である工房では、
「織姫はさらわれたのではなく、テロの混乱に乗じて逃げたのではないでしょうか。鬼たちを手引きしたのも、もしや織姫では?」
「ばかなっ! 娘は天の川を渡れないのだぞ。駆け落ちなんて出来るはずがない」
それ、フラグです。
家臣の言葉に激怒して唾を飛ばす天帝は、兵士を集めて屋敷を襲った
これはあくまで、駆け落ちの可能性を打ち消すためであり、この時点においては、織姫はすぐに見つかり、事態はすぐに収拾されるかと思われたのだ。
天帝の意思が働いている天の川――その向こう岸。
詰めている牛舎には、すでに彦星の姿はなく、代わりに牛たちが働いて仕事をまわしている。
「こ、これは、なんと奇怪な」
派遣された兵士たちは絶句した。
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