私が守りたかったのは

 おばあちゃんのお通夜の時、

 親戚で集まってお寿司を食べたんだ。

 みんながおばあちゃんの悪口を、

 唾を飛ばしながらしゃべってる。


 私には優しいおばあちゃんだったから、

 そんな汚い口から出る唾が、

 私のお寿司に飛ばないように、

 両手で寿司桶を囲むように食べてたんだ。


 そしたら親戚の叔母さんに、

 誰もあんたの寿司なんか取らないよ、

 意地汚い子だねと叱られた。


 この子は昔から卑しいんだよと、

 母にも言われた。


 でも私が守りたかったのは、

 お寿司なんかじゃなく、

 私に優しくしてくれたおばあちゃんを、

 口汚く罵るあんたたちの唾から、

 守るためだったんだよ。


 私は寿司桶を両腕で囲んで、

 泣きながらお寿司を食べたよ、

 卑しいと思われても構わないよ。

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