余命の秒数

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 ……


 ある街に住んでいた頃、

 路上にチョークで、

 延々と数字を書いてる老人がいたんだ。

 数字を十桁で区切って、

 二十行くらい書いていた。


 なんの数字かはわからないし、

 その老人にも聞けなかった。


 その街に住んでる間、

 いくつかの場所で、

 数字の羅列が書かれてるのを見たんだ。


 でもある日、

 その数字が四行と3210……で、

 途切れているのを見かけたんだ。


 その近くに飛び散った血の跡と、

 警官が書いたらしい、

 人型に囲まれたチョークの跡があったんだ。


 その老人が亡くなったのかはわからない。


 もしかしたらその人は、

 自分の余命の残りの秒数を、

 アスファルトに、

 刻んでいたのかもしれないよ。

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