コロ

 犬のコロが死んだんだ。

 ずっと弱って寝たきりだったけど、

 生きててくれるだけで、

 心の支えだったよ。

 17年もそばにいてくれたから、

 私の横で息を引き取った時、

 声を上げて泣いたんだ。


 永代供養するお金なんてないから、

 お庭に穴を掘ってコロを埋めたんだ。

 その上に色鮮やかなお花を植えた。

 お花と一緒に天に召されるようにと。


 だけどある夜、

 物音がしてお庭を見たら、

 お花が踏みにじられていた。

 土が掘り起こされていたんだ。


 キツネの仕業だったよ。

 キツネはコロの亡骸を食い尽くして、

 汚れた口で逃げて行ったよ。

 私は棒を持って追いかけたけど、

 近くの森で見失ったよ。


 ぐちゃぐちゃにされたお庭に、

 座り込んでまた泣いたんだ。


 どうして私の人生はこうなんだろう。

 どうしてこんな目にばかり合うんだろう。


 コロ…… 内臓まで食べられて痛かったよね。

 コロ…… やり返せずに悔しかったよね。


 私は「殺してやる」と叫んだんだよ。

 この世のすべてを憎んで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る