第8.5話・なんでもない日も幸せです
翌日。
パソコンを受け取った際に、ついでだからと色々な新作家電を見ていく。
小日向が何か家電ほしいと雑な提案があったからだが、男の子で家電が嫌いな子はいないので付き添うことにする。
「んで、何欲しいんだ?」
「美容機器見てこようかなって」
「コロコロするやつとかか?」
「違うよー。気になっているのは、バットマンのベインが付けてるやつみたいなの」
気でも狂っているのか。
禍々しいデザインしたマスクの美容機器なんてないわ。
こいつはヴィランにでもなりたいのか。
「小顔効果があるんだって。ここの筋肉鍛えるんだよ」
自分の頬を指差す。
いーってやって、白い歯を見せている。
「いや、元々顔が小さいのに気にするのか?」
「可愛いのも努力がいるのですよ」
「女子も大変だな。俺には無理だわ」
「あ、これもいいな! ホットアイマスク。スタッフのみーちゃんが持ってるんだけど、めっちゃ気持ちいいんだって」
「へー。どの人?」
「うんとね! シュークリーム突っ込んだ人」
仲良い人ならそんなことするなよ。
ただのフレンドリーファイアじゃん。
「みーちゃん、専属のメイクアップアーティストで、バリ化粧上手いんだよね。私も教えてもらったし」
「化粧は分からんが、あんなに大量な道具を扱っているのは凄いよな」
「ねー。学生だとまず触らない道具もいっぱいあるって言ってたよ。いつも使うのプチプラばっかりだから、専門の道具は私も分からないや」
小日向は一通り美容機器を見て、テレビやカメラ。パソコンコーナーをぐるりと回っていく。
「ゲーミングパソコンとか興味ないの?」
「なんで?」
「Apexやってそうじゃん」
「おちょくっとるんか」
今世紀最大の煽りである。
ゲームはやらないこともないが、最近は忙しいしゲームをやる時間があれば他のことをやりたい。
スマホゲームもやらなくなったしな。
「クラスの男子で流行ってるじゃん。やらないの?」
「ゲームやってたら、こうして付き合うことも出来ないだろ? 時間あるなら他のことしたいからな」
「あ、そっか」
「ゲームやりながら女子と仲良くなれるって言ってたから、コミュ力ある陽キャには人気らしいがな」
無限マラソンをするスマホゲーとは違い、みんなでボイスチャットしながら、ワイワイ遊ぶのがいいらしい。
Switchとかも人気だな。
「えー、ゲームするより普通にお茶したり買い物した方が楽しいし、仲良くなれると思うけど?」
「遠くのゲーム仲間だから、一緒に遊びには行けないんじゃないか?」
「世知辛い世の中だねー」
ネット経由で遠距離恋愛するやつもいるわけで、その行動力は凄いと思う。
同人仲間でも、数ヵ月に一回しか会えない人もいるし、ゲーム内で遊ぶ関係だとしても、遠距離で友達になるのは大変そうだ。
「読者モデルなんだから、知り合いにも遠距離の人もいるだろ?」
「いるよ。北海道の子もいるからね。おみやげめっちゃ美味しいんだよ!」
蟹のポーズを取る。
ほたて、あわび、いくら。
「海の幸の宝石箱やぁ」
「食に貪欲だな……」
「仕事を頑張った後のごはんは、美味しいもの食べたいからね。あ! むこうの催事で、北海道フェアやってるて言ってたし、行こうよ!」
「いいけどさ。夏前だし、金ないぞ?」
「見てるだけでも楽しいよ」
結局買ったのはザンギ(唐揚げ)だった。
海の幸の話は何なんですかね。
「揚げ物は正義!」
まだまだ子供だな。
嬉しそうに唐揚げを頬張る。
八個入りをぺろりと食べていた。
おまけのおまけ
どこにでもいる中学三年。
笹木ひより。
身長も小さくまだまだ子供っぽいあどけなさが残る女の子。
ちょっと高望み気味な漫画の恋愛に憧れるお年頃である。
そんなひよりの部屋には、額縁に入ったサインが飾られている。
昔にもらった小日向風夏のサイン。
この前にもらった小日向風夏の可愛いイラストが描かれたサインである。
家宝にしようと思ってからは直ぐに額縁を買いにいったのだ。
中学生の彼女にはこれと言って趣味はなかったが、毎月出るファッション雑誌を買ったり、ツイッターで推している読者モデルの日常を覗くのが趣味だった。
学生のおこづかいでは洋服を買って着飾るのは難しいが、ツイッターの可愛いくて綺麗な女性を見ているのは実質無料である。
ベッドの上でリラックスして寛ぎながら、読者モデルやコスプレしているレイヤーさんなどの可愛い女の子のタイムラインを見ていた。
「わ~風夏ちゃん可愛い」
ザンギを食べる写真を載せて、つぶやいていた。
それ以外にも、ネイルしたばかりの写真や晩ごはんの写真も上げている。
「早く高校生になりたいなぁ」
高校生になれば、大人の女性になれるのではないか。
身長もバストも大きくなるかも知れない。
渋谷の街が似合う女性になりたい。
小日向風夏みたいな憧れの人に近付きたいと思いながら、そのまま寝落ちしてしまうまでが彼女の日課であった。
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