俺の平穏な異世界生活〜欲しい物を手にする能力を身につけました

月城 夕実

第1話 どうやら巻き込まれたらしい

俺は目つきが悪い。

特に怒っているわけでもないのだが、他人が見ると怒っているように見えるらしい。

加えて、ガタイも大きく怖かったのだろう。

学校では友達がいなかった。

クラスで独りぼっちだった。

鏡に向かって笑顔の練習をしてみたことがあったが、変な顔にしかならなかった。


「別に、ひとりすきだからいいけどさ」


自分の部屋でつぶやく。

時間はもうすぐ夜中の24時だ。

もう寝た方がいいかな。

俺は荒滝ミライ15歳、明日は中学最後の卒業式だ。


「あれ?」


急にぐらっと体が傾いた。

倒れる‥‥と思った瞬間。

部屋ではないどこかの場所にいた。


「何だここ」


白い空間…何もない。

夢かな?

もしかしてあのまま寝てしまったのでは‥いや気を失ったのかも‥。

などと考えていると…。


「申し訳ありません!事故に巻き込んでしまいました」


金髪で青い目の外国人女性?が目の前に現れて詫びてきた。

何言ってんの?この人。


「わたくしはこの地区の神をしている、ラシーネと申します。今回、貴方様を事故に巻き込んでしまい申し訳ありません」


話を聞くと、異空間のスキマに俺が、運悪く入ってしまい、気がついたときは遅かったらしい。

普段から事故にならないように監視をしているといっている。


深々とお辞儀をしてきた。

神様?

お辞儀って日本流だなぁ。

良く出来た夢だ。


「夢じゃありません!現実を見てください。荒滝あらたき 末来みらいさん!」


ラシーネに強い口調で言われた。

どうやら夢ではなさそうだ。


「神様?よくわかんないけど、死んじゃったってやつ?」

ラノベやアニメでよくある展開か?


「死んではいないのですが‥元の世界に戻すことが出来なくなってしまいました‥。なので、他の世界に転移して生活してもらう事になります‥」


ずっと頭を下げて話す女神。

真面目な人なんだなぁ。


「頭を上げてください。済んだことはいいです。なので、生活に困らないように能力?とか付けてくれれば」


「なんてお優しい方なのでしょう。では転移先の知識とイメージした物が現れる能力を与えておきますね。あ、お金は出せませんよ?あと、空間収納魔法アイテムボックスも付けておきますね」


女神は少し涙ぐみ、ほほえんだ。


「では幸せな人生を!」


俺はまぶしい光に包まれ、次の瞬間 草原にいた。

穏やかな日差し、風が通り抜ける。

こちらは昼間のようだ。


「あ、ついでに顔とか変えてもらえばよかった!」


この目つきで今まで苦労してたんだ‥。

忘れてたよ…。


っていうかこれ異世界転移ってやつなのでは。

今更、事の重大さに気が付く。

まあ、俺が居なくなったからといって多分悲しむ人いないだろうしな。

父と母は喧嘩ばかりしていて、俺の事は無関心だ。

一人いなくなったところで大したことないと思う。


「逆に食いぶちが一人減ったから喜んでるかも‥」


俺、結構食べるからなぁ。

ちょっと自分で言ってて悲しくなってきた。

そういえば今日は卒業式だったな。

もう関係ないけど。

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