黄金の月

カンジ87

第1話、夜空に光る 黄金の月など

スズメがピシャッって道路にへばりついていた

可哀想にと思う

トラックに踏まれたのかどうかなんて

考えてたら

蟻が列をなして歩いているのが見えた

その群れをお構いなしに配達のUber Eatsが過ぎ去る

あー

何匹かUber Eatsの車輪の犠牲になってた

あー

僕は先を急いでる

蟻にまで心奪われはしない


なんて小説の書き出し書いてた


さんまと所のダーツひとり旅見ながら

牛乳一杯と黒霧島のレモンハイ

2つテーブル並べて呑み比べながら

書いてた

あーさんまも所も歳を随分とったもんだ

一般人からみたら彼達は面白愉快なスーパーマン

素敵なスターだ

僕から見たらさらにつき足したいことがある

彼達は無邪気に神に手を振り上げ続けた

未だ少年

心優しき悪童だ

あー幸アレ

悪童に永遠に幸アレ

感謝してるよ

いろんな人をほっこり幸せにしてくれて有り難う


あー

話は少しズレテしまった

横道も迷い道もクネクネすればするほど真っ直ぐな心になりたいと憧れてしまう

ホドホドにしとかなくちゃ

さぁ

本題に戻ろう


ごめんよ

だいぶ待たせたね

1人にして悪かったよ

許してね

許してくれるかい?


なにどういう事ー

あなたー

こんな可愛い女を悲しく可哀想に

ほったらかしにして

一体どこ行ってたの?


綺麗な夏子の透き通りる肌に顔に

僕は見とれてた

すると夏子は言った


なによーどうしたのー

ずっとあたしのこと視点も合わせずぼんやり眺めてー


その目とてもやらしいわ

服を貫きあたしを見てるのね

早く答えなさいよ


なんで視点ずらして遠い目のまんま私を貫こうと見てくるの?

仕事終えたらすぐ帰ってくる約束でしょ

なにーなんなの

ねぇ

答えなさいよ


売り損ねたじゃないのー

心配しすぎて私のトリーバーチバック思いの外の値段よ!

どうしてくれるのーー!


ふっ

相変わらずお喋りな欲張りな女性だ

僕は

内面の虚しさを盗みとられぬよう穏やかに笑って夏子を抱きよせた

その時胸のポケットからスマホがこぼれ落ちた

そして

スガシカオの黄金の月が流れ始めた


ぼくの未来に光などなくても

誰かがぼくのことをどこかでわらっていても

君のあしたがみにくくゆがんでも

夜空に光る 黄金の月などなくても

ぼくらが二度と純粋を手に入れられなくてもを~

こぼれ落ちるスマホから流れ出た


ちょっとこっちきて!

ギラギラの僕



なによー

眠たい夏子



マッサージしてあげる

助平な僕


えー

変なとこさわるんでしょ

眠りかけ夏子


大丈夫だよ

ちゃんとマッサージ背中のツボ推してあげるから

その後少しだけキスさせて

少年の僕


だめー

寝落ち夏子


ブラジャーずらして

夏子のお椀に細やかにキスをしてたら

夏子がさっと起きて一言

ブラジャー汚さないようして!


人生をエスカレーションし過ぎたせいなのか感覚は鈍く

でも慣れた抱き寄せる手つきは

スローモーションを忘れ瞬発的な快楽ばかり求めている


毎日を水面浮かぶ小枝のように軽やかに

ちっぽけ流れていき瞬発快楽にイカサレ今を生きる

日々の冒険はなく誰かを愛し喜ばせる術もなく慈しみもなく

あーそう

慈しみもなくと言えば大切にするとか

可愛がるとか言う仕草を

表す言葉なのだが

僕には2つ上の兄がいて

その兄は何でも大切にする人だった

同じプラモデル模型を母さんからクリスマスイブの日貰っても僕は1週間で飽きて違うおもちゃ鷲掴み振り回していた


兄は大切に壊れないように優しく

箱に入れて棚に載せて1年たっても2年たっても

大切にしてたのを今もはっきり覚えてる


そんな兄から久しぶり母に電話があった

コロナ禍のなかのよくあるリストラだ

折角教授まで登り詰めた

辻調理師専門学校を

辞めてトラック運転手になる

との事のようだった


トラック運転手が夢だたったのだと

心優しい兄は嘘をつく

今も大切にきっと想う

年老いた母に嘘をついた


そうね良かったね

車は危ないから

でも気をつけなさいね

半分痴呆の母はひっそり

喉の奥の痰をつまらせながら

そう答えた


幾日かして母に聞かされ僕は

心の裏っかわで涙が少し

こぼれてるのに気づいた

でもそれだけの事だった

日々は過ぎてゆく


僕はと言えば朝

歯を磨き汚れた鏡の前身支度終え

同じ時刻同じ陸橋を超え

失われた30年日本経済の

トンネルと共に電車に

乗り会社へと向かう


失われたのは発展に情緒に

資本主義社会の信頼と

もっとも最たるは僕にとっては

若さなのだ


もし見えない鏡があり

なにか映るべき姿があるのなら

それはきっと他の生物よりも

誇り高き奇怪な曲折のうえに

立つ人間と言う歌を唄い

愚かなでも密かな歪みに

耐えながら立っている

僕なのだろう


だから仲間とよく仕事帰りに呑みに行く

スナックバーで夏子を見かけた時

すぐに2人は打ち解けた


夏子の部屋には僕の服が増えていった

夏子のすらりと綺麗な脚に

お椀のような胸に

計算高さ消せないそれでも

可愛いい素顔に僕は打ち解けた


向こうは僕のお金に打ち解けた


それで良かった


夏子の部屋

僕の服はある程度の量で止まったが

夏子の物は永遠に増え続けて行った

コートにバックに時計に指輪に形を変えてぐるぐるそれは輪廻転生のように夏子は僕のお金をぐるぐるメルカリとデパートを使って変えて行った


子供に妻に労力と金と真心を捻出する様となんだかぼやけてそれは似ていた

独り者の僕にとって夏子は妻であり子供なのだ

夏子がどう僕を想ってるだろう事に

僕はもう関心はない

そうそれはもう自分の妻に

関心がなくなる

中年初老組のそれとよく似ていた


とにかくメルカリ夏子が愛おしかった

男は大人のふりをした子供で

女は子供のふりをした

大人と言うみたいだが

僕は大人のふりをした

ちょっぴり母のふりも出来る

子供のような男だった


若い夏子、綺麗な夏子が

透き通ってゆくの見ている


それでだけで良かったのだ


僕は氷などのように

固まったものが溶ける物体だ


しかも漆黒な物体だ


エスカレーションに

金だけ上手に掴みとれる物体なのだ

きっと固まりながら

何かに情熱をかけて柔らかくなって

暖かくなって溶けてまた

固くなって溶けてくのだろう


だから時々鍋や辛いもの食べた時

汗を雪崩のように撒き散らすのと思う


会社の仲間は子供に妻に会社に

身を捧げて委ね今を細やかに生きる


妻のエステに子供の学費に

未来の己と過去の己を

天秤にかけ捻出して細やかに

今を生きる


それは世間的至極当たり前のように

思われた

いや思うべきだった

でも僕は違った

僕には子供も妻も必要ではなかった

きっと誰かと家族を築いたとて

我が子の成長も妻の劣化も

きっと僕には韓国のお粗末極端な

メロドラマのように見えて

僕の眼には映らないだろう


先ほども言ったように

僕自身が母であり子供で

ありさらに欲張りではあるが

父でもあり1人ファミリーなんだ


ほら例えばワールドカップや

オリンピックで

ジャパンジャパンと応援するが

僕は他を応援して

自己満足する儀式はもう

小学生のころ毎日楽しみに見てた佐々木 信也のプロ野球ニュースで卒業してしまった

悲しかったりも少々するが

他を応援しての自己投影をもう2度と

出来ない不出来な心を持ってしまった


でも本当のところ悲しくなんてなかった

純粋であることに対する

世の非情を耐えるかよわき

不器用な人間でもないが

僕は我が子に己を重ねて

応援するよりも

震えながら自分を鼓舞して行きたい


昨日の自分に負けないよう

夢のような現代平和ボケの

時代を生き抜きたいのだ


そのためには夏子が必要だ

若い夏子の透き通ったお椀と綺麗な長い脚と潔癖症な夏子が必要だった


美とは人間の生き方のもっとも緊張した瞬間に現れると言う

身震いするほど美しい夏子が必要だった

愛してるかどうかなんてそんな単純なことではない


ねぇ片方だけなら少しだけキスさせてあげる

でも少しだけよ


あー夏子は優しい

人間の唾液が苦手な夏子なのに

今日は優しい


少年のような眼球で僕は夏子のお椀に口を

這わせた

何故か涙が本当にこぼれてた


君の明日が醜く歪んでも

僕らがが2度と純粋を手に入れなくても


こぼれ落ちたスマホからはまだスガシカオの黄金の月がナッテいた


ネェあなた


夏子はブラジャー外して

僕に言った


明日アクアラインで海中走りたいの私

木更津アウトレットよ

いいでしょ!連れてってね

いっぱいいっぱい欲しいものだらけよ





道路にへばりつくような渋滞の海中トンネル翌日走るこの僕を皆さん

笑ってくれてもいいのですよ



ぼくの未来に光などなくても

誰かがぼくのことをどこかでわらっていても

君のあしたがみにくくゆがんでも

夜空に光る 黄金の月など,,,,,

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