偶然仲良くなったギャルの姉はクラスの窓際に座る天才お嬢様だった。

犠牲となった山羊

第0章

プロローグ

毎年、春になると思い出す。

僕の人生を変えた、いや変えさせた二人の双子姉妹との出会いを。


玄関に飾られた写真には三人とも笑顔で写っているが、あの頃は三人で写真を撮ることさえないと思っていた。


「ごめん、霞。お待たせっ!」


長い黒髪に昔から変わらない整った顔立ちをした僕の自慢の奥さんが息を切らしている。そんな姿も愛らしく思う。


「どう、変なとこはない?」

「ないよ、すごく似合ってる。」


彼女の黒いワンピース姿はあまり見慣れないが、本当によく似合っている。


「ありがとう。、、、何か考え事してた?」

「いや、写真見てたら二人と出会ったときのこと思い出してさ。もう9年も経つんだなって。」

「ふふっ、懐かしい。待ち合わせの場所まで少し時間がかかるし、またあの頃の話でもしていこうよ。霞が私たちのことどう思ってたかも聞きたいし。」


いたずらな表情で詰め寄る彼女に「またか、、、」と小さくため息を吐きつつ、僕も改めて振り返ろうと思う。大切な思い出とあの日の約束を忘れないためにも。


あれは、僕が念願の一心高校に入学してすぐのことだった―――。

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