レイクシアのダンジョン2

 ダンジョンの探索はなにごともなく順調に進んだわ。


 敵が現れてもサクッと倒して終わり。


 道中なんども戦闘中に増援の敵に絡まれたけど、普通のパーティーなら混乱するところなんだけどわたしたちのパーティーは違う。


 護衛に騎士さんが8人も付いているからサクッと倒して混乱するどころかあせりもしない。


 このパーティーは火力が過剰過ぎるのよ。


 おまけに最大級火力のアイも控えているし、明らかにオーバーパワーね。


 *


 ダンジョンは入り口が封印されていたからか、3年前にフランシスカが潜ってから殆ど育って無いらしく、3層目でボス部屋前の扉に辿り着いたわ。


「思ったよりも規模が小さかったな」


 フランシスカも同意する。


「あの当時のままね。この規模だから学生の二人パーティーでも事故もなく最奥のボス部屋迄来れちゃったのよ」


 それが幸運だったのか不幸だったのかは今となってはわからない。


 フランシスカの範囲哨戒スキルで扉の外からボス部屋内を調べると、ボスのリッチと取り巻きのスケルトンが何体かいることが確認できた。


 ウィリアム王子はボス戦での作戦の説明をする。


「ここのボスは不死の魔法生物のリッチだ。不死の魔法生物は治癒魔法が弱点でそれ以外の魔法や物理攻撃は効きづらい。そこでリッチを足止めしたら、あとは聖女のフランシスカに討伐を任せる」


 5人もいるのにフランシスカ1人に任せるって、作戦にしてももう少しやりようがあるんじゃないの?


 わたしは異を唱えた。


「5人もいるのにフランシスカ一人に任せてもいいの? 武器に治癒魔法の加護を付与するとか、他にやり方はいくらでもあるんじゃないの?」


 なんでこの作戦に決まったのか事情を知っていたチャールズ王子が割り込んでくる。


「アイビス、すまない。これはフランシスカのとむらい合戦でもあるんだ」


「弔い合戦?」


「この戦いはフランシスカの親友を殺したリッチへの復讐なんだよ」


「どういうこと?」


「フランシスカが学生の時、友だち二人とこのダンジョンに挑戦したんだけど、ボスと戦って負けてフランシスカだけが生き残ったんだ」


 ウィリアム王子も言葉を重ね、わたしを説得する。


「アイビス、すまない。フランシスカの復讐の為にも協力してやってくれないか?」


 そう言うことだったのね……。


 理由を説明されれば断る理由も無い。


「わかったわ。ボスはフランシスカに任せてわたしたちはサポート役ね」


「それで頼む」


「回復サポートはわたしとアイに任せて!」


 アイは不満気だ。


「こんなちっちゃなダンジョンのボスなんて、アイビス様のすんごい魔法一発で焼き払えばいいんです」


「ここのボスは魔法効かないらしいから無理よ」


 わたしが無理と説明してもアイは目を輝かせて期待満面の笑みを浮かべる。


「アイビス様の魔法なら楽勝です! 先手必勝、ダンジョン丸ごとアイビス様の魔法で焼き払いましょう!」


 ダンジョン丸ごと焼き払うって……。


 わたしたちが生き埋めになるわ。


 わたしはアイの作戦には乗らない。


「今回はフランシスカに任せましょう」


「それがアイビス様の出した結論なら従います」


 アイはしぶしぶ作戦を受け入れてくれた。


 こうして作戦は決まり、騎士さんは4人だけがボス戦に同行することになった。


 *


 重いボス部屋の扉を開けると、ボスのリッチが多数の雑魚骸骨をお供に玉座に座り待ち構えていた。


「我がダンジョンに土足で踏む不届き者よ。我のにえにしてやる!」


 リッチは落ち着き払って立ち上がるとフランシスカが辺りを見回す。


「アウレリアはどこ?」


「アウレリア?」


 リッチはなにも知らないと言ったように首を傾げる。


「誰だ? それ」


「6年前にあなたと戦った女の子よ!」


「6年前って……。お前はあの時の二人連れの女の片割れか!」


「アウレリアはどこにいるの?」


「あの女なら……食らった」


 それを聞いたフランシスカは目を見開いた。


「食べたですって!?」


 激怒するアウレリア。


 フランシスカから噴出した聖なる息吹がリッチたちを襲い、雑魚スケルトンを全て消し去った。


 その威力にリッチも感心する。


「昔と違ってなかなかやるようだな。ならば我も本気を出さざるを得ない」


 そう言うと、先ほどよりも明らかに強そうなスケルトンが6体召喚された。


 それを見てチャールズ王子の声が裏返る。


「マジか? あれってマスタースケルトンじゃねーかよ! しかも6体って……」


 マスタースケルトンとはスケルトンよりも遥かに上位で凶暴な骸骨のモンスターだ。


 マスタースケルトン1体でスケルトン100匹に相当する戦闘力を持っていると言われている。


 それを6体も召喚したんだから、堪ったもんじゃない。


「リッチ入れて7体かよ? 一人1体相手したとしても2体余るな」


「どうする、兄貴?」


 そこにアイから指示が飛ぶ。


「マスタースケルトンの足止めはアイとチャールズでする。リッチは頼んだ」


「そんな事出来るのか?」


 無茶言うなよって感じのチャールズ王子だけどアイは自信満々だ。


「騎士団との乱組みと思えばよゆう」


「わかったぜ! 行くぜ相棒!」


 チャールズ王子とアイはマスタースケルトンの群れに飛び込んでいった。

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