マリエルの様子
わたしはランスロットに剣を教えて貰ってるけど、マリエルがどう訓練しているのかが気になったの。
もしかして主人公補正でとんでもなく優秀な先生に教えて貰って剣の訓練をしてるかもしれない。
なのでアイにマリエルがどこで訓練しているのか調べて貰ったわ。
一日調べて貰った結果、放課後に学園のコロシアムの隅で修行してることがわかったの。
早速コロシアムを訪れているんだけど、マリエルは一人で黙々と剣を振っていたわ。
アイに調査の時の様子を確認してみる。
「マリエルはずっと一人で訓練してたの?」
「アイが調査してた間、マリエルはずっと一人」
今日も一人ってことは剣の先生を付けてなさそうだ。
剣の振り方は、なんと言うかわたしが見ても素人の振り方だった。
後に男装騎士となるマリエルだったけど、この時はまだ剣技の実力が開花してないみたいで剣に気合がこもってなくて漫然と振ってるだけな感じ。
わたしがランスロットに剣を教えて貰ったばかりの頃を思い出すわね。
このままじゃマリエルが武闘会で上位入賞するのは夢のまた夢。
わたしが手を抜かないで訓練を続ければ負けることは絶対無いと確信したわ。
かといってウィリアム王子に対戦カードを操作してもらわなければ、マリエルの主人公補正で予選リーグを勝ち進み決勝リーグに進出なんてことがありうるのが怖い。
わたしは訓練を続けてウィリアム王子に予選リーグのカードの操作をしてもらうべく訓練を続けた。
*
ランスロットに剣の師匠となってもらってからだいぶ時間が経った。
既にランスロットからは『ウィリアム王子よりも段違いのレベルで強い。むしろこの短期間に剣技を向上させるとは十年に一度の逸材だ』と言われ、それも騎士免許免許皆伝レベル、今すぐに騎士団に加入出来る紹介状を書いてやろうかとも言われていたりする。
わたしはあくまでもマリエルとウィリアム王子に勝つ為に訓練していただけで騎士なることには興味がこれっぽっちもないの。
わたしが「騎士になるつもりはないわ」というとランスロットがやたら悲しそうな顔をしていたのを今でも思い出すわ。
ランスロット、色々教えてくれたのにごめんね。
そして今日はウィリアム王子との試合の日だ。
コロシアムを貸し切り試合が行われる。
ウィリアム王子は既に準備万端でコロシアムで待っていて、わたしが到着すると
「アイビス・コールディア! お前がマリエルと戦いたい理由は聞いた」
「誰からよ?」
「ダチからだ」
ダチってブラッドフォードのこと?
ブラッドフォードに口止めはしなかったけど、なんでもウィリアム王子に話しちゃうって口が軽すぎだわ。
あとで問い詰めて厳しくお説教よ。
ウィリアム王子は口上を続ける。
「どうやら命に関わる事らしいな」
「そうよ」
「あの子と戦えないと命に関わるっていう流れがよくわからんが、俺に勝てれば対戦カードを望むものにしてやることを約束してやる」
そしてウィリアム王子は繰り返す。
「俺に勝てればな!」
*
「いざ!」
ウィリアム王子の号令と共に試合が始まった。
王子は剣を突きさすように構え得意のダッシュで切り込んで来たかと思うと、目の前でわたしを袈裟切りにした。
模造刀でもこれは当たれば
なのでわたしはウィリアム王子の後ろに回って避けたわ。
王子を見ると足元がガラ空き。
どう見ても足元を
足元を掬ってもいいんだけど、実技オリエンテーションの時と同じまたこの勝ち方なの?
さすがにワンパターンよね。
かと言って、プライドの高いウィリアム王子の頭をポカリと叩くわけにもいかないし……。
どうしよ?とちょっとだけ悩んだ。
もういいや!
悩むのは無駄!
ワンパターンと言われても構わない。
わたしはウィリアム王子の膝の裏側を模造刀で突いて膝カックンさせてやったのよ。
ウィリアム王子は「うっ!」と声を漏らして膝をついた。
これで勝負が決まったわ。
もう少し、接戦になると思ってたのにこうも大差で勝てちゃうなんて……ウィリアム王子のプライドはボロボロよ。
するとウィリアム王子は目に涙を溜めて悔しがっていたの。
「完全に仕留めたと思ったのに、まさか勝負にならない程アイビスが成長してたとは……。無様に地面に膝を突いているのは訓練をサボった俺への報いだな」
そして悔し涙を流す王子。
ごめん。
膝がガラ空きだったから思わず膝カックンしちゃったんだけど、そんなにプライド傷つけちゃったの?
ランスロットからはウイリアム王子よりも遥かに強くなっていると聞いていたんだから、もう少し接戦になる様に演技をしておけばよかったわね。
こうして王子との試合を終え、わたしは無事にマリエルとの対戦カードを勝ち取ったのだった。
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