学園生活と成績
ランスロットを師匠に剣の鍛錬を始めたわたしだけど、剣の鍛錬だけをしていればいい訳じゃない。
既に水晶学園の学園生活が始まってるから、ちゃんと勉強をしないと落第してしまうわ。
まあ、勉強しなくともリルティマニアのわたしにとっては余裕っていえば余裕なんだけど、その日に習ったことの復習を兼ねてたまに出される課題を提出しないと欠席扱いになっちゃうからね。
放課後を利用して課題を済ませるのがこの学園の生徒の日課になってるんだけど、わたしの放課後は忙しい。
放課後にクラブ活動は無いけれど、ランスロットのとこに出向いて剣の鍛錬をしないといけないから放課後までに課題を済ませないといけないのよ。
だから、昼休みとかは一切なしで課題をやっているわ。
お陰でクラスメイトとの会話よりも勉強が大好きなガリ勉さんと思われて誰も近づいて来やしないの。
まあ、ここで手を抜いたら落第になって社会的に終わるか、武闘会でマリエルに負けてガリム騎士団長の指導を受けたマリエルは剣技を覚醒して男装騎士ルートを突き進み、わたしはマリエルに切り捨てられて物理的に終わるかの二択だから手を抜くわけにはいかないのよ。
昼休みに教室で勉強してても他の生徒たちに避けられてるのがわかるから、いたたまれなくなったわたしは図書室に来て勉強するのが日課だわ。
図書室はいつも人がいなくて静かだわね。
まるで神聖で荘厳な神殿みたい。
って思ってたんだけど……。
「ぐがーーー!」
なにこの野獣の雄叫びは!
と思ったら身体の大きな男子がイビキをかいて爆睡してる。
これじゃ課題なんて出来やしない。
図書室は簡易宿泊所じゃないのよ!
ということで、文句を言ってやったの。
「あのー!」
「あのーーーー!」
なんど声を掛けても起きやしないから、持っていたノートで頭をペチンと叩いてやったわ。
すると男子は飛び起きて椅子から転げ落ちた。
無様に床に転がる男子生徒。
うそー!
ノートで頭をコツンとしただけなのに、そんなに驚く?
でもわたしは謝らない。
悪いのは図書室でイビキをかいて寝ていた男子だし、謝ったらこっちが悪いことになって騒音の文句を言えなくなるわ。
男子は頭を抱えて起き上がる。
「いたたたた、ビックリした! 隙を突かれて背後からモンスターに襲われたと思ったぜ」
どんな夢を見てるのよ……。
って……、マリエルの男装騎士ルートの攻略キャラのブラッドフォードじゃない。
やば……。
また攻略キャラと出会いフラグを立ててしまった。
このブラッドフォードはマリエルの騎士志望仲間になるの。
このブラッドフォードが引き起こす断罪後、マリエルと決闘をすることになった
このつり橋は
でも、仕掛けた罠が不発で、代わりにつり橋のロープが燃えて橋が落ちるの。
わたしもマリエルもつり橋の残骸につかまって奈落の底に落ちることは無かったけど、ブラッドフォードはつり橋から落ちそうになってるわたしを見捨ててマリエルだけを助けるのよね。
そのあと限界がきて手を滑らした
まあ、今のわたしはマリエルと戦う気なんてこれっぽっちも無いし、決闘するにしても罠なんて姑息な手は使わないけどね。
それは置いておいて……。
これ以上、攻略キャラと関わったら大変なことになるわ。
慌てたわたしはブラッドフォードに気付かれる前に図書室を後にしようと思ったんだけど……、ブラッドフォードはわたしの前に立ちふさがった。
ブラッドフォードはわたしの手を取り、深く頭を下げる。
「お嬢様、お怪我はございませんか?」
うわ。
さっきまで床に転げてた男子が言っていいはずがないイケメンな
怪我をしてたのは椅子から転げ落ちたブラッドフォードの方でしょうが……。
「ございませんわ」
わたしがブラッドフォードを避けて図書室から立ち去ろうとすると、ブラッドフォードは再度わたしの前に立ちふさがる。
「さっき気配を感じさせずに俺の後ろを取ったのはキミかい? 神経を研ぎ澄ませて心を落ち着かせて瞑想していたのに、こんなことは初めてだ。是非ともキミの名前を教えて欲しい」
「なんかカッコいいこと言ってるけど、単に爆睡してただけでしょ?」ってツッコミたい気持ちでいっぱいだったけど、これ以上攻略キャラと関わるのは危険なので無視してその場を後にしたんだけど、このことがブラッドフォードがグイグイとわたしに迫って来る切っ掛けになったのよね。
*
昼休み明けの授業でわたしが先生にさされた。
「アイビス、次のページを読みなさい」
「はい」
わたしは立ちあがって教科書を読み始めたんだけど、突然教室に響き渡る大声。
「キミはアイビスって名前なのか!」
大声を上げたのはブラッドフォード。
それだけじゃない。
次の授業の剣技の時間。
ペアを組んで好きな相手と稽古をすることになったんだけど、ちょっと前に喧嘩をして微妙な雰囲気になってるウィリアム王子を押しのけてブラッドフォードが練習相手に立候補してきた。
「俺がアイビスの相手をします!」
これには
「てめー! あれほど俺の女に手を出すなと釘を刺しておいたのにどういう了見だ!」
手袋をブラッドフォードの顔に投げつけ決闘の申し込みだ。
ブラッドフォードは手袋なんて気にせずに聞き返す。
「釘? お前大工なの?」
煽り力高!
「ほら、落とし物だぜ」
地面から手袋を拾い上げると、思いっきり振りかぶって手袋をウィリアム王子の顔に投げ返した。
たぶん、ブラッドフォードは入学式でも爆睡していてウィリアムが王子って知らないんだ。
どうしよ……。
このままじゃブラッドフォードが負けてクビちょんぱになっちゃうわ!
結局、わたしには止められなくて決闘が始まってしまった。
ブラッドフォードはウィリアム王子のことを舐め切ってるけどたぶん今の王子は学園最強クラス。
ブラッドフォードがやられちゃう。
と思ったんだけど……。
「てめー、なかなかやるじゃねーか」
「お前もな」
ブラッドフォードが予想以上に健闘して、いつまで経っても決闘に決着がつかない。
結局、決闘は授業のコマを丸々使っても終わらず、チャールズ王子とアイが間に入って無理やり止めさせた。
*
翌日……。
なぜかチャールズ王子とブラッドフォードは肩を組んで語り合っていた。
めっちゃ仲が良くなってる。
どうなってるのよ……。
二人は『拳と拳で語り合って親友になった』とか言ってるんだけど、ほんとどうなってるのよ?
仲が良くなるのはいいことだけど、ブラッドフォードは攻略キャラ。
これ以上、攻略キャラをわたしの周りに増やさないで!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます