クリスくん
治癒魔法の先生の助っ人として現れたのは攻略キャラの一人のクリスくんだった。
クリスくんと言えば次期大司教の候補と呼び声が高い攻略キャラだ。
治癒魔法が得意なんだけど、まさか治癒魔法の助っ人でわたしの家にやって来るとは思わなかった。
クリスくんルートでわたしは断罪イベントの後に学園どころか家ごと領地を追放されるのよ。
それだけならまだいいんだけど、家族全員共々馬車に乗って国外へと夜逃げ中に謎の集団に襲われて悲惨な最後を迎えるって結末。
リルティアでの
そんなクリスくんとの出会いフラグを自ら立ててしまうとは……。
わたしはなんてことをしでかしたのよ!
悲惨な結末を回避するために色々と努力をしてるんだけど、攻略キャラのウイリアム王子とチャールズ王子と顔見知りになってしまって、おまけに大商人の息子のビリーくんとも面識を持ってしまったの。
同じ過ちを犯さないように攻略キャラとこれ以上知り合いとなってフラグが立たないようにお屋敷の治癒師を先生として選んだのに攻略キャラが先生の助っ人として現れてしまった。
避けたはずのフラグをまたまた自ら立てに行くとは……。
わたしはクレア先生に苦情を言う。
「なんでクリスくんが助っ人なのよ……」
「アイビス様はクリスのことをご存じだったのですね」
わたしがクリスくんが来たことにクレームを付けていると、クリスくんは困った顔をしている。
「僕はアイビス様のことを会ったことも聞いたことも無かったのですが……」
クリスくんは
「わたしも噂でしかクリスくんのことは知らないわ。同い年で優秀な治癒師がいるとの噂を聞いただけだから安心して」
「そうだったんですか」
わたしがリルティアの中で一方的に知ってただけだもんね。
知らなくて当然よ。
「わたしってウィリアム王子にひとめ惚れされたんだけど、付き合う気は無いと断ってるのに凄いヤキモチ焼きだから同い年の男の子が来ると困るのよね」
「ウィリアム王子はアイビス様の浮気を心配してるのですか。アイビス様は魅力的だから恋心を持たないように気を付けます」
「あはは、そうお願いするわ」
それにしても治癒魔法を教えるのになんで大聖堂からクリスくんを連れてくる必要があるの?
お屋敷に居る他の治癒師でいいじゃない。
「そもそもなんでクリスくんが助っ人なのよ? お屋敷の他の治癒師を呼べばいいじゃない」
「このお屋敷の治癒師はわたし一人だけです」
「そうだったんだ」
クレア先生なら優秀だから、屋敷に2人も3人も治癒師は要らないわね。
「治癒魔法の習得は生徒と先生のマンツーマンで行わないといけないので、生徒はアイビス様の他にアイ様もいるので助っ人のクリスを呼びました」
「なんとなく、助っ人を呼んだ事情はわかったわ。でもなんでクリスくんを呼んだのよ? 他の治癒師を呼べなかったの?」
「わたしは平民出身だったので学園では浮いた存在でボッチだったので、治癒師の知り合いとか友だちが居なくて……クリスしか知らなかったんです。お嬢様、ごめんなさい」
クレア先生の辛い学園生活時代の過去を聞いてしまった。
これ以上は触らないでそっとしてあげよう。
「それにクリスはわたしの弟ですが、わたしに治癒魔法を教えてくれた先生でもありますので腕に間違いはありません」
今、クレア先生がとんでもないこと言わなかった?
クリスくんがクレア先生の弟って……。
「クリスくんて、クレア先生の弟なの?」
「はい」
あーっ……。
わたし、またやらかした。
これ以上攻略キャラとのフラグが立たないようにお屋敷の中の使用人から魔法の先生を選んだのに、またまた攻略キャラとの出会いフラグが立ってしまった。
クレアくんとクリス先生って名前がめちゃくちゃにているじゃないの。
顔もよく見てみるとなんとなく似ているし。
クリス先生はクリスくんと関係があるだろうと少しは気づけよ、わたし。
こうしてわたしは攻略キャラとのフラグを立ててしまうのだった。
*
治癒魔法の訓練が始まった。
クリスくんはアイに話し掛けている。
「アイ様は治癒魔法の素養が無いのに治癒魔法が少し使えると、姉のクレアから聞いているんですが本当ですか?」
「アイは治癒魔法が少しだけ使えます」
「そうなんですか。ではアイ様はクレアと組んで下さい」
と言うことは、わたしがクリスくんと組まないといけないの?
もし、チャールズ王子にクリスくんと魔法の訓練をしていることがバレたら、ヤキモチを焼かれて結構面倒な事になりそうなんだけど……。
「わたしがクレア先生と組むのじゃダメ?」
「姉のクレアは正直治癒魔法を教えるのがあんまり得意じゃないので習得に時間が掛かることになりますがよろしいですか?」
「治癒魔法って覚えるのにどれぐらい掛かるの?」
「姉に教えて貰うのだと1年ぐらい掛かりますかね……」
「1年も? 治癒魔法って覚えるのが結構大変なのね」
わたしが長い修行期間に覚悟を決めていると、クレア先生はそこまで掛からないと怒っている。
「お姉ちゃんが教えてもそんなに掛からないから! 上手くいけば半年ぐらいで習得出来るから!」
「修行期間が一年から半年へと半分になったけど、まだ結構長いわね……」
「姉が教えたなら習得まで半年ぐらい掛かりますが、僕が教えれば一週間で使えるようになりますよ」
「ずいぶんと短くなるのね」
半年が一週間になるとは凄い短縮だわね。
クリスくんから教えて貰うのが一番だと思うけど、クリスくんから教えて貰ってたらウィリアム王子がヤキモチ焼くだろうな。
うーん、クレア先生とクリスくんのどっちに教えて貰うのがいいのか凄く悩む。
「僕がアイビス様に治癒魔法を教えれば、ウィリアム王子にバレる前に治癒魔法を覚えることが出来てなにごとも無く大聖堂に帰る事が出来ると思いますよ」
要するにさっさと教えてさっさと帰りますと言うことらしい。
ヤキモチ焼きのウィリアム王子に知られて面倒な事になるのだけは避けたいので、この案に乗るしかない。
「そうだわね。じゃあクリスくん、お願いするわ」
こうして、わたしはクリスくんに治癒魔法を教えて貰うことになったのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます