新たな特訓
チャールズ王子がアイの剣術の先生に決まってからというもの、毎日のようにウィリアム王子とチャールズ王子がやって来て少し
チャールズ王子は中庭でアイと共に剣の鍛錬をしている。
「うりゃー! 僕の新たな奥義だ! 斬盾剣!」
アイはチャールズ王子の力任せの剛剣をひょいと避けて模擬刀で足を
「力任せの剣の破壊力は凄まじい。でもアイには通用しない」
反応速度の速いアイには溜め系の力技は通用しない。
攻撃の発動の隙を突かれて大抵の技は発動前か直後に潰される。
普段は無敗のチャールズ王子もアイにだけは歯が立たないようだ。
「さすが僕のフィアンセだな。ますます惚れたぜ!」
チャールズ王子は単純にアイと剣を
「アイビス! お前、チャールズなんて野郎と絶対に浮気しないでくれよ」
「バカねぇ。愛するウィリアム王子を差し置いて、チャールズ王子に浮気するわけなんて無いじゃないですか」
「頼むよ……アイビス」
ウィリアム王子はマリエル登場と同時にひとめ惚れしてわたしとの関係が破局するのはわかっているけど、元アラサーとしては現時点で恋人の振りをするぐらいの心の余裕はある。
変に冷たい態度を取って王子へのヘイトを貯めるなんてバカな事はしない。
マリエル登場と同時に空気の様に王子の元から去るのが最善の策だとリルティマニアのわたしは思っている。
むしろ大変なのは王子が毎日やって来ることで、勉強をしている振りをしなくちゃいけないこと。
ウィリアム王子が来ている間、参考書を読んで時間を過ごしているんだけど、最初は面白いと感じた参考書読みも全部知っている事なので一ヶ月もするとアイの様に参考書を全部暗記してしまって読んでいる振りをするのが辛い。
アイと一緒にチャールズ王子に剣術の勉強でも教えて貰おうかとも思ったけど、ウィリアム王子を刺激することだけはなるべく避けたいわね。
どうやって時間を潰そうかと悩んでいるとウィリアム王子が暇つぶしのヒントを教えてくれた。
「そう言えばアイビスやアイは魔法の勉強をしているのかい?」
「魔法ですか? いえ、全く」
ゲームのリルティアではマリエルが操作キャラだったので、魔法の不得意なマリエルが夏休みに発生する魔力開放イベント前に魔法の練習をするのは効率が悪くて愚策と言われていた。
でも、今のわたしってアイビスだから魔法の適正はどうなんだろ?
リルティア内でアイビスが魔法を使った描写は無かったけど全く適正が無いってことは無いと思うんだけどな……。
「入学までに治癒魔法ぐらいは使えるようになっておいた方がいいと思うぞ」
「そうですわね」
アイと魔法の練習をしていればチャールズ王子が来なくなってウィリアム王子も一緒に来なくて済むからいいわね。
暇つぶしにもなるし、魔法の勉強を始める事にするわ。
取り敢えず屋敷で一番の治癒師を呼んで特訓を始める事にした。
わたしはアイを呼び寄せる。
「アイ、チャールズ王子との剣の特訓は週に一度にしなさい」
「アイビス様を守るためにアイが世界最強になるためにはまだまだ特訓が必要だと思われます。なぜ鍛錬をしたらダメなのですか?」
世界最強になるってなにを目指してるのよ……。
「剣の実力は上流貴族クラスの試験をパスできるぐらいの実力で十分だわ。それよりも魔法の勉強を始めた方がいいわね」
「そうでした。上流貴族クラスへの試験は学力、剣術、魔法の複合なのを忘れていました」
「と言うことで、明日から魔法の勉強を始めるわよ」
こうしてわたしたちは魔法の特訓を始める事になったわ。
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