試験勉強
今日は試験勉強を始めてから3日目。
2日後にはウィリアム王子との学力試験対決がある。
アイは水晶学園に生徒として通える上にわたしと同級生になれると聞いて大喜び、驚異の集中力を発揮して辞書の様に分厚い参考書の山を全部丸暗記してしまった。
どんな問題を出されても完璧に回答し、アイに関しては学園の入学試験の合格は確実だと思う。
むしろ問題となるのはわたしだった。
前世も含めて生まれてからずっと勉強らしい勉強をしたことが無かったので、勉強した内容がちっとも頭の中に入って来ない。
先生役のビリーくんもわたしの想像以上の出来の悪さにどう教えたらいいのかわからず、完全にお手上げ状態だった。
「アイビス様はけっして勉学の素質が無い訳ではありませんが、あと2日の勉強で模擬試験で満点近くを取るのはかなり厳しいと思います」
わたしも模擬試験で満点近くを取るのは無理だとビリーくんに同意せざるを得ない。
「そ、そうね」
それでもビリーくんはわたしの満点取得を諦めず、策を模索し続けてくれる。
「アイビス様の得意な科目はありますか? 闇雲に勉強しても効率が悪いので得意科目を取っ掛かりとして勉強を進めていきましょう」
模擬試験で満点を取る為にビリーくんが頑張ってくれているのはありがたいんだけど、ぶっちゃけた話、今のわたしは全教科苦手だ。
わたしは思わず愚痴をこぼす。
「得意教科って言われても全教科不得意で得意教科なんて無いわ。あえて言うならリルティアのクイズが得意だけど、この世界にはクイズマシンは無いし試験もクイズじゃ無いもんね……」
わたしが愚痴った一言をビリーくんは拾い上げる。
「クイズマシン?」
「この世界には存在しない
でも、ビリーくんは引かない。
「そのクイズマシンを詳しく教えてください!」
あまりにグイグイと押してくるので、わたしは引き気味だ。
「せ、説明しないとダメ? ゲームのシステムの事だから、すごく説明しにくいんだけど……」
「そこをなんとか、教えてください!」
ビリーくんは興味津々でぐいぐいと顔を寄せてくる。
わたしは投げやりになりつつ、もうどうなっても構わないとリルティアのクイズマシンのことを説明する。
ゲームの中で入学試験に使う装置で、受験生が選択肢4つの中から正しい答えを選ぶことで学力を測る装置だとわたしが教えると、ビリーくんはクイズマシンなんて見たことも無いのにわたしの話だけでゲームの中のクイズマシンとほぼ変らないスケッチを描き上げた。
「すごいわね……。ゲームの中のクイズマシンその物よ」
ビリーくんの描いたスケッチはスティックやボタンどころか画面の表示内容まで再現されていて、ゲームの中のクイズマシンそのものだった。
ビリーくんはその画面を指さしながらわたしに質問攻めをする。
「アイビス様、画面のここの部分は説問でしたよね?」
「そうね、クイズの質問ね」
「そして、この部分が回答の選択肢ですね」
「そうよ。そこにあるスティックで操作してボタンで回答を選択するの」
「それで、アイビス様はこの説問と答えを全て暗記しているのですね」
「自慢じゃないけど、どの問題も質問文が表示され始めてから10文字以内に回答出来るぐらい暗記してるわ」
ビリーくんはそれを聞くとやれやれといった表情をする。
「クイズの質問と回答をそれだけ覚えているなら、アイビス様はわざわざ勉強する必要なんて無いじゃないですか」
「え? そうなの? でも、わたしが覚えているのはクイズの質問と選択肢の組み合わせであって、入学試験の質問と答えじゃないわ」
「選択肢の場所じゃなくて、選択肢の内容を覚えてるんですよね?」
「そうね。選択肢の場所は毎回変わるから覚えても意味無いから選択肢の文章を覚えているわ」
ビリーくんは分厚い参考書を一冊取り出してページを開いて文章をわたしに見せる。
「ここを見て下さい。このスケッチの問題と解答そのままですよ」
確かに言われるとその通りだった。
ビリーくんは続ける。
「このクイズマシンの問題という物はこの分厚い参考書の要点を簡潔にまとめた物なんではないでしょうか?」
「そうなの?」
「絶対にそうです」
ビリーくんに言われて参考書を改めて見てみると、参考書はクイズの問題を数ページを使って詳しく説明してあるだけだった。
さっきまで分厚いだけで面白味が全くなかった辞書みたいだった参考書はまるでリルティアの詳細設定解説書に見える。
ゲームの解説書として読んでみると頭にスラスラ入って来るというか、全て知ってることだから改めて覚える必要さえなかった。
机上の勉強と言うことで拒絶反応を起こして参考書を読んでも全然頭に入って来なかったけど、これなら試験で満点を取れるかもしれない。
「ビリーくん、ありがとう! ビリーくんのお陰で模擬試験は完璧よ!」
「いえ、僕もクイズマシンと言う面白い物を知れて楽しかったです」
お互いを感謝する
こうして
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