学力勝負
勉強を教えて貰おうと家庭教師を呼んだらその家庭教師と学力勝負をする羽目になってしまいました。
ウィリアム王子が
でも謝るつもりはないわ。
あの憎たらしい生意気な態度を取ったウィリアム王子をぎゃふんと言わせて反省文の束を書かせてやるもんね!
アイが今にも泣きそうな顔で心配そうに話し掛けて来た。
「模擬学力試験まで1週間しか無いけど、どうするつもりなんですか? それに家庭教師の先生もいなくなってしまったんですが、どうやって勉強するつもりなんですか?」
そりゃ、その家庭教師の先生と学力対決をするんだから教えてくれる人がいなくなって当然だわね。
「わたしたちだけで勉強しても無理そうなので、新しく先生を雇うしかないわね」
「家庭教師の先生のあてはあるのですか?」
「無いことはないわ……たぶん」
「いつもは無駄に自信満々なアイビス様らしくない、少し頼りない返事ですね」
「まあ、わたしに任せておいて!」
だって先生のあてはあったけど、まだ会ったことが無いんだから仕方ない。
リルティアの登場人物のなかで一番学力の高いキャラと言えば、攻略対象の一人である『ビリー・マーチャント』で陰キャ糞眼鏡と言われてる。
好感度が上昇すると暗い表情の中にデレが見れる陰デレキャラだったりするので一部のリルティマニアに人気があるわ。
ビリーくんは攻略対象の一人ではあるけど、ビリールートは地味な話が多いのでぶっちゃけキャラ人気は底辺に近い。
ビリーくんは大商人の息子で平民ではあるけど、家は多額の納税をしていることで下流貴族次ぐ平民では最高位の名誉貴族としての地位を得ているの。
幸いなことにビリーくんはわたしのお父様のコールディア領の中に住んでいるので、お父様の召喚状があれば簡単に呼び出すことが出来るわ。
早速お父様に事情を話すと「もう王子様と夫婦喧嘩をしたのか。若いっていいね」と笑いながらビリーくんの召喚状を書いてくれた。
この召喚状を使者に持たせてこのお屋敷迄召喚してもいいんだけど、今は時間がないから使者なんかに任せてはおけない。
わたし自らが出向く!
馬車を用意してもらってアイと二人で一緒にビリーくんの元に出向いた。
本当は護衛の衛兵も連れた方がいいんだけど、自領の中の街だし多少武の心得のあるアイもいるから大丈夫。
アイの運転で、馬車に揺られて30分もしないで隣街のマーチャント家のお屋敷に着いたわ。
大きな屋敷を見たアイがビックリしている。
「アイビス様のお屋敷とまではいかないけど、随分と大きなお屋敷ですね」
「そうね、お父様の領地の中で一番の稼ぎ頭だからね」
連絡は入れてないはずだけど、家主のマイケル・マーチャントが笑顔で待っていた。
「これはこれはお嬢様。突然のご訪問、なんの御用でしょうか?」
「ビリーくんに急用があって会いに来たわ」
「ビ、ビリーにですか?」
息子のビリーくんがわたしになにか失礼なことをしたんじゃないかと心配しまくって怯えているマイケルさん。
リルティアのゲームの中だとビリーくんとマリエルが立ち話をしているところにアイビスとその取り巻きが突如現れて平民同士付き合うのが相応しいと、からかうことがあったわね。
アイビスが現れるとろくなことが起こらないって言うのは今も昔も変わらないんだろうな。
屋敷の使用人に呼ばれて、実験の最中だったのか白衣姿のビリーくんが現れた。
「今、実験中なので用があるなら手早く済ませて欲しい」
息子のビリーくんの愛想のない態度に焦りまくる家主のマイケルさん。
どう見ても領主の娘に対して取る態度じゃなかったからマイケルさんは焦りまくりだ。
「実験の最中で忙しいところ来てしまって申し訳なかったわ。でも、わたしにも譲れない急用があるの」
いつもはビリーくんの事をバカにするアイビスで有ったけど、今日はそんな態度は一切なく真剣な
「どのような御用でしょうか?」
「勉強を教えて欲しいの。一週間後の水晶学園の模擬学力試験で
「勉強ですか……」
「お願い! 教えて!」
再び頭を深く下げる
ビリーくんは一週間の特訓ではさすがに勉強期間が短いので模擬試験には間に合わないと断ろうとしたんだけど、
「いいでしょう。ただし、今は実験の最中ですので明日以降来てください」
「ありがとう!」
それを聞いてアイは大喜びだ。
「アイビス様よかったですね。先生が見つかりましたよ!」
手を繋ぎ合って喜ぶアイとアイビス《わたし》。
家庭教師の先生が見つかったことで笑顔を見せるアイであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます