回禄
三鯉 愛作
第1話 語り
友人の家で昔話を聞いた。
その友人は熊本の小さな村で15まで過ごし、高校からは福岡に越してきて寮生活を送っていたらしい。
「らしい」というのも、私達は大学からの付き合いなのだ、登山サークルで私達は出会い、よく休みの日には一緒に登山へと赴いていた。
彼女は右腕の肘から肩にかけて白い布で覆っていて、なぜなのかは私を含め皆に話してないらしい。
軽い気持ちで聞いてみたのだが、そのときはうまく流されてしまったが、何か話したくない理由があるのは聞かれた彼女の反応をみてすぐに分かった。
そんな彼女が昔話をしたいと言ってきたので少し驚いた、あまり昔のことを話してくれない人だったのでということもあるのだが、腕の布のことも話すと言われたことがその大半を占めていたと思う。
だがここで話すのは少し難しいからうちに来て一対一で話したいと言い出したので快諾し、次の休みの日に行くことした。
大学からそれほど遠くない、20分もすれば大学に着くようなアパートの一室に住んでいる。
昼過ぎに彼女の家に手土産を持って行った。
「来てくれてありがとう狭いけどゆっくりしてってね。」と、駐車場の前に立っていた彼女が出迎えてくれていた。
リビングにあるテーブルの椅子に私は腰掛け、彼女がいつも登山するときに持っていく紅茶を私に出してくれた。
彼女も座り、彼女が語り始めた。
これは私の昔住んでいた村に伝わる風習でね、
「回禄に三年近づくべからず」っていうんだけ
ど、火事があった家には3年間近づいたらいけな
いって意味。
んで、なんでこんなものがあるのかわからなかったから、子供の私は両親に聞いてみたの。
なんで3年も近づいたらいけないの?ってね。
今思うとそんなこと聞くのって不謹慎なことだよね、でもまだ小学生だったからよくわかってなかったんだろうね。
そしたらお母さんが話してくれたの、「火事が起きるとね、びをっこ様が来るのよ。びをっこ様はこの村の守り神で火事の起きた家に行って亡くなってしまった人たちを成仏させてくれるのよ。そのために必要な時間がいるの、それが3年。だからびをっこ様の邪魔にならないように家に行ったり、近づいたらいけないのよ。家の中に入っちゃったらびをっこ様が勘違いして一緒に連れて行っちゃうかもしれないからね。」
そんな事言われても子どもだったからふーんって感じで終わったんだよね、その話。
それから中学生になってから二年目の冬休み明け、保育園から一緒だった…って言っても村には一つしかなかったんだけどね、まぁいっか…保育園からの友達だった美桜(みお)ちゃんの訃報が先生口から告げられた。
回禄 三鯉 愛作 @Taranome_aisaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。回禄の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます