リバース=システム

奈良ひさぎ

0 REBIRTH-SYSTEM

「この世界では『転生者』を寄せ集める効率的な仕組みが構築されている。誰が、いつ、どのように、何のために開発したのか。その背景知識はこの際必要ない。この世界では考えられないバックグラウンドを持ち合わせた人間の数が、この場所でのみ有意に多い。その事実さえあれば、この世界について語るのは簡単だ」


 【それ】はゆっくりと、重みのある語調で語りかける。こちらの知らないことを知っていて、その圧倒的な差を教えられている。言葉にされなくとも、そのことが分かってしまう。


「『転生者』は必要ない」


 短いその言葉からは、決意を通り越した思念がこびりついていた。そうせねばならないという心情が全てだった。


「君たちには消えてもらう。この世界では幾年か、生きていたという証も消させてもらう。こちらを憎むというのであれば、いくらでもそうしてくれて構わない。だが本当に憎むべきは君たちを生み出したこのシステムだ。同じ世界、あるいは似通った世界のみで転生を繰り返すReincarnationではなく、選択的に悪影響を及ぼす別なる世界からの転生のみを対象にしたRebirth。しかしこの違いすらも、君たちが認識する必要はない。君たちはここで跡形もなく消え、次なる生を受けることもない。全員の来世を含めた未来を完全に断ち切ってこそ、この世界の安寧は実現される」


 言い返せなかった。【それ】がそう言うのであれば、その通りなのだろう。立場が弱ければ、何かを選ぶ権利もない。可能性がそこに一つしかないのであれば、それが事実なのだ。


「悪く、思うなよ」


 大きな、大きな力が、こちらに向かって振り下ろされた。

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