第10話 仕事内容

 な、なんですってー!?!?


 私の頭の中で、今までの出来事が走馬灯のように浮かぶ。

「……魔王陛下、私は大変な失礼を——」

 だって、酔っ払って眠った挙句に、宿まで運ばせたり。ガロンさん、なんて親しげに呼んだり。


 冷や汗が止まらない。


「……まて」


 魔王陛下は、私の手を握った。

「!?!?!!?!?」

 こ、この手は何!? 私、不敬すぎて殺されちゃうのー!?

「落ち着いて、そう……、深呼吸するんだ……」


 言われるがままに深呼吸をすると、少しだけ落ち着いてきた。


「魔王陛下、じゃなくて、ガロンでいい。先ほどまでの俺と、今の俺、何が違う」

 そ、そうは言っても。

 ガロンさんはもしかしたら偉い人なのかも、なーんて、呑気に考えていたけれど。まさか、魔国の王だったなんて。確かに目の前にいるガロンさんは、何一つ変わってないけれど……。でもそこに付随する肩書を知った後だと、緊張する。


「ですが、魔王へ——」

「ガロン」

 短く遮られたのは、そう呼べってことよね!

 えぇ、でも……。


 躊躇う私をガロンさんは、星のような瞳で覗き込んだ。そして何も言わずに見つめてくる。


 これは、呼べってことよね、間違いなく。


「ガロンさんは……」

「あぁ」

 柔らかく金の瞳が細められる。その瞳に魅入られないように気をつけながら、話を続ける。

「その……地位のある方なので、私があまり馴れ馴れしくするのは……」

「ラファリア、あなただって、侯爵令嬢だろう」

「!?」

 どこでそれを!?!?

 私、ガロンさんに実家のこと話したかしら。


「……悪い。トドリア侯爵家の紋が見えたから」

 確かに、荷物が入ったカバンにとても小さくだけれど、紋が入っている。

「いえ……」

「それに、言ったはずだ。あなたには、俺の元で働いてもらうと」

 

 それは、確かに、言ったけれど……。


「あなたにはこの国でも、仕事のために相応の地位に就いてもらう」

「その、仕事って?」


 詳しい内容はまだぜんぜん聞いていなかった。


「あぁ。あなたには、闇獣の世話係になってもらう」

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