ガンショップにて

 ガンショップに向かったゼファーは、迷うことなくガンショップへ入店する。

 店内にはピストル、アサルトライフル、ショットガン、スナイパーライフルなど様々な銃器が展示されており、10人以上の客が入店して飾られた銃を眺めている。


「いらっしゃい。何をお求めで?」


 ガンショップの店主と思わしき小太りの男が、銃の手入れを止めてゼファーに声をかけてくる。


「ゴツくて大きい銃を」


「ならアサルトライフルなんてどうでしょう?」


 店主はアサルトライフルの展示してあるコーナーを指し示す。

 そこには様々なアサルトライフルが展示されており、客も1番賑わっているコーナーであった。


「悪いけどショットガンが見たいんだ。後、スラッグ弾置いてる?」


「ええまあ置いてますけど……どれぐらい用意しましょ」


「散弾とスラッグ弾、両方100発ほどそれにスマートリンクシステムを。あとそこのガンバッグもとりあえず欲しい」


 ゼファーはレジ前の壁に展示されているガンバッグを指差して注文すると、そのままショットガンコーナーに向かっていく。


「っち、傭兵か? カモだと思ったのに」


 店主は悪態を付きながらもゼファーの注文どおりのガンバッグを用意すると、メモに「散弾・スラッグ弾100発ずつ、スマートリンク」と書いてガンバッグに貼り付けた。


 *********


「どれにしようか……」


 ゼファーは展示されていたショットガンを眺めながらも、小さく呟きながら物色していた。

 銃が展示されている壁には「触ってもOKです」と書かれており、ゼファーも安心してグリップを握ったり構えてみたりしている。

 グリップの安定感やリロードの仕方などを実際に試し、ゼファーは手持ちの貨幣と相談した結果。

 銃の型番が書かれたタグを手に取り、店主のいるレジへとゆうゆうと戻っていくのだった。


「すいません。これとさっき頼んだやつを」


「あいよ……」


 無愛想な表情をしている店主はタグに書かれた型番を確認すると、奥から銃の入った箱を持ってくる。そして箱を開封してゼファーに中身を確認させた。


「この銃で合っているか?」


「ああ、この銃で合っている」


「それじゃあ、銃1丁に散弾とスラッグ弾が各100発ずつに外付けのスマートリンク、それにガンバッグだな」


 追加で銃弾の入った箱2つに手のひらサイズの機械が1つ、そして黒のガンバッグを店主は差し出す。

 全て注文したものだと確認したゼファーは、携帯端末をレジの側にある機械へタッチする。

 ピロンと軽快な電子音と共に、商品の支払いが完了するのだった。


「支払いは問題ないよな?」


「ああ確かに。あんがとよ」


 ガンバッグに他の商品を全部入れたゼファーは、携帯端末を懐にしまい込みそのままふらりと店を出ていく。


「さて、一番優先するのはやっぱりこれだろ」

 

 店を出たゼファーが一番最初にしたこと、それは店の前でショットガンの準備をすることであった。

 わざとらしくショットガンを通行人に見せつけ、その姿はまるで「私は店でショットガンを買いましたよ」と言わんばかりである。

 ゼファーは取り出したショットガンにスマートリンクを取り付け、自身の目であるサイバーアイと同期させる。

 1秒もせずにサイバーアイとスマートリンクの同期が完了し、ショットガンの状態やショットガンの残弾数がゼファーの視界に表示されていく。

 視界に表示された情報を見たゼファーは、満足そうに頷くとショットガンをガンバッグにしまおうとする。


「よお、ご機嫌だなゼファー・六条」


 後ろから誰かに名前を呼ばれたゼファーは、反射的に振り向いてショットガンを構える。だが話しかけてきた相手の顔を見て、すぐにショットガンを下ろすのだった。


「ディランか……そっちから来てくれたのか」


「そりゃあそうだろ。今じゃヴァイスシティの裏社会で今一番の有名人のゼファー?」


 ディランと呼ばれた反逆パンク的容姿をした男――ディラン・シャドウはニヤリと笑みを浮かべると、ゼファーの横に立ち缶コーヒーを取り出す。

 ゼファーとディランの関係は、ゼファーがSAERDにいたときから非合法の情報を手に入れるために、何度かディランと情報を取引したためである。


「ほら、とりあえず俺の奢りだ。これはタダでいいぞ」


「……ありがたく貰っておく。ディランとりあえず情報が欲しい」


「あーちょっと待て、俺はこの缶コーヒーを楽しみたいんだ。1分ぐらい待てよ」


 ディランの言葉に仕方なく口を閉じて、ショットガンをガンバッグに入れていくゼファー。

 そのまま不満足そうな表情をしつつも、ゼファーは手の中の缶コーヒーの表示成分を軽く見ていく。

 成分の50%を砂糖が占める、もはや甘味料と言ってもよいコーヒーと呼ぶのは難しい冒涜的な何か。それが入った缶のタブを開けるゼファー。

 一口飲んだだけでゼファーの口の中に、砂糖の甘さが一瞬で広がっていく。


「ゲホッげほげほ……こんなの好きなのかディラン」


「おう好きだぜ、疲れた時にはサイコーにハイになれるシロモノよ」


 美味そうにガブガブ飲んでいくディランの言葉に、思わず眉を顰めてしまうゼファー。

 そうして缶コーヒーを飲んでいると、1分が簡単に過ぎていくのであった。


「落ち着いたかゼファー。それで何が知りたい? お前の首に賞金を掛けたやつか? それとも誘拐されたマリアの嬢ちゃんの居場所か?」


「はぁ……とりあえずは、誘拐されたマリアについて聞かせてくれ」


 マリアが誘拐された。それを聞いたゼファーは大きなため息をつきながらも、すぐに気持ちを切り替えマリアの救出を優先させる。

 ゼファーの言葉を聞いたディランは、嬉しそうに笑いながら缶を握りつぶすと、「そうこなくちゃな」と言いゼファーを車に案内するのだった。

 ガンバッグを片手にゼファーはディランについて行く。

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