27話 悠久の風
「これは……」
「完全に日本家屋の平屋ね」
「この町にこんなのあったんだね……」
トプスさんに案内されたのはどちらかというと中心街から離れた住民街の一角。喧騒が遠くで聞こえる程度の長閑な場所には赤レンガで出来た家が所狭しと並びまさにヨーロッパの裏路地という街並みを表現している。その中でも特に目立っているのは、ぽつりとあるTHE・JAPANESEの日本家屋。
……いや、なんで?
「この家には俺の昔の友人が住んでたんだが自国に帰っちまってな。管理を任されたんだが特殊な家で売りに出すことも出来ないってんで俺がとりあえず保管してたんだ。おめぇらにならやってもいいなと思ってよ。ま、取り敢えず中に入るか、この家は入る前に靴を脱いでくれよ?そういうもんらしいんだ」
「わかりました……なぁ、やっぱりこれ日本文化あるよな?」
「うん、もしかしたらそういう国があるのかもね」
「奥に来てみて、囲炉裏があるわよ!それにこっちの部屋は畳!」
へぇ、見れば見るほど日本文化が入ってるんだな。年季も入り昔からのにおいや空気を感じることができ懐かしさを感じどこか落ち着く風が吹いている。
「おめぇら、伊吹の国に興味あるのか?」
「伊吹の国か……そこが日本文化チックな街なのか」
興味はめっちゃくっっちゃあるが、今はどちらかというと驚きの方が強いな。まさか、こんな所で日本文化に触れられるとは思ってなかったからな。
「伊吹の国は樹海に隠されている。もし、おめぇらが行きたいというならその時は紹介状を書いてやるから俺んところへ来い。あそこは部外者に厳しいもしかすると近づいただけでも消されるかもしれないから気を付けるといい」
「いいのか!?」
まさかの所で次の冒険につながる情報を手に入れたな。しかもその冒険先は日本風の国と来た。ふっふっふ、楽しみだぜ。
「なるほど、コーラはこういう風に進んできたんだね」
「はぁ、そりゃあ何も知らないわけよね、だって誰も知らないところにいるんだもの」
「おい、いろいろ言うのはやめてもらおうか、それに今回のはお前らだって同じように進もうとしてるんだからな?」
「いやぁん、私コーラの色に染められちゃう」
「はいはい、にしてもめちゃくちゃひろいなこの家」
仮にギルドメンバーが10人くらいなら増えても一人一部屋個室与えられるぞ。
「どうだ?こんな感じの家だが、お勧めするぞ?」
「うん、私は気に行ったわ!」
「僕も」
「あぁ、俺もめちゃくちゃいいと思う」
「よっし、それじゃあちゃちゃっと契約しちまうか、代表は誰だ?」
「「先生で」」
「はいはい、知ってたわよ。」
「ほら、これがギルドホームのカギだ無くすなよ?あとは……ギルド名は考えたか?」
「2人とも、考えた?」
「僕は一応考えたけど、というかいつものコーラ漬けスズラン丼でいいかなって」
「いや、あれ本名もじりでよ?却下。一応私も考えたけど先生とゆかいな仲間たち」
「おい、却下だ」
「冗談よ、このネタ誰かはやらないとでしょ?断ったってことはコーラも一応アイデアあるのよね?」
「まぁ、一応」
「お、何々?」
「……悠久の風」
「かっこいいわね、どういう意味?」
「いや、この家の昔からの風を感じてぱっと頭に……」
「ふぅん?まだあるでしょ?」
っく相変わらず勘の鋭い奴だ。
「……この家を見て思ったんだよ。縁側で死ぬまでお茶を飲みつつ仲良く笑いあうじいさんばあさんみたいに俺らもこのままずっと笑って遊びあえたらなって、だから
「……コーラ、いいね、うん!悠久の風、僕は気に入ったよ」
「うふふ、そんなこと思ってたなんてね。コーラがデレるなんて珍しい。明日は鮭でも振るのかしら?」
「っはぁ。ギルド名は
「おう、いい名前じゃねぇか。っとよし、これでお前らはギルド悠久の風だ。俺は王城に戻るがおめぇらは疲れてるだろうしここ、ギルドホームで休みな」
「トプスさん、また王城に行くので手合わせお願いしますね、ありがとうございました!」
王城に向けて歩きこちらへ向けて背中越しに手を振ってくる。いつでも待ってるぜということなんだろう。その様がとても似合っていてすくしょをとりたいくらいだt「カシャッ」
「今スクショ撮ったろ?」
「だってかっこよかったから」
「あとで俺にもくれ」
「ふふ、いいわよ?」
よし、あとでパソコンの壁紙にしとこう。
「2人とも何してるの~早く入ろう、もう僕疲れたよ」
「そうだな、それじゃあ」
「失礼しま~す」「ただいま」「ひゃっほーう」
「ふふ、合わないね」
「いいじゃない、みんな違うからいいんじゃないの」
「違いないな」
同じような性格のやつばかりだったらここまで仲良くなってねぇか。いろんな個性があるからそれが絡み合うんだな。
ちなみに、左からゆーり、俺、先生である。うん、性格が出てるな。
「で、どうするか……正直家具も最低限設置してあるし」
「私は撮影スタジオを設置してくるわね、コーラも温泉交換してたわよね、どうやって使うのかしらね?」
「うーん、とりあえず取り出してみるか……これは宝石?なるほどな、ギルドハウス用コアを設置したギルドハウスでこの宝石を使いたいところで実体化させておくとギルドハウス設定から部屋の詳細を作り変えられるみたいだ」
これコア取らなかった人大丈夫かな?もしかしたら取らなかった人もいるだろうし簡単に手に入るといいんだけど……
「じゃあ先にギルドハウス用コアを設置しないとね、どこにする?」
「奥にある小さい部屋はどう?」
「いいな、じゃあそこで」
おおきな水晶のようなインテリアにも使えそうなギルドハウス用コアをギルドハウス設定に写っている間取り図を見て、見つけたあまり使わなさそうな部屋に設置すると「ピカ―」っと光だしギルドハウス設定にカスタマイズという機能が追加された。
「ここから設置するのね。それじゃあ私はここにしようかしら」
先生はコアの隣の比較的小さめな部屋をサクッと決めると撮影スタジオだと思われる宝石を実体化させる。
「えっと?この撮影スタジオを押せばいいのよね、はい」
「おぉ、これはすごいな」
先生が設置をした瞬間に部屋の何もなかったところに同時にオブジェクト化することで目を覆うような数のエフェクトが舞う。エフェクトが落ち着き目を開けるとそこにはグリーンバックやライトなどが設置されており一瞬のうちに撮影スタジオが出来上がった。……ただ一言言わせてもらうなら和室に撮影スタジオは合わない。
「うん、いい設備ね。細かい設定は今度やるとして……さて、コーラの温泉設置しに行きましょうか」
「やっぱお前もちょっと合わなさにひいてんだろ?」
「だって和室になるなんて思わなかったじゃない、でも温泉ならものすごく和に合うんじゃない?」
「うんうん、僕も楽しみだなぁ。コーラが取らなかったら僕が取ってたかもしれないくらいには楽しみにしてるからね」
「どれ、じゃあ温泉設置しに行くか。詳しく見ると風呂場か庭にしか設置できないみたいだから風呂場に行くぞ」
「お風呂檜風呂だったわよね?ちょっともったいなくない?」
「っぐ、確かに。でも庭じゃあなぁ」
「設定見てたら覗き見防止フィルターが付いてたわよ?これで塀の外から中の様子は見えない設定にできるみたい」
「へぇ、じゃあとりあえず庭に設置して見るか、裏庭でいいだろ?」
「うん、表の方は素振りとかで使えるだろうし。それよりも柵ついてなかったらどうする?丸見えだよ?やっぱり風呂場を変えるの?」
「うーん、別に庭でもよくない?どうせ外から見えないんだし」
まぁ、俺らだけなら水着とか着て入ったり簡易な仕切りを別に用意すればいいんだけど、というかいつものことだけど先生自分が女であること忘れてない?もう少し恥じらいを持とう?それに、
「もしかしたら別のギルドメンバーが入る可能性があること忘れんなよ?」
「まぁ、設置して見ようよ。」
それもそうだ。机上の空論をしていても仕方ないな。
「えっとこれで設置っと」
温泉用の宝石を取り出し使用すると再び目を覆うほどのエフェクトが飛び交う。
「まさにこれぞ温泉という温泉、いいね。それに竹で出来たつい立も風情があってなかなかだ」
芝生が石畳に変わり、岩を積んでお湯をためる典型的な温泉だが日本家屋と相まっていい雰囲気を出している。
「わかるわ、修学旅行の行先で竹のついたてがないと物足りないわよね」
「先生のそれはどうせ、覗き見したいだとか、このついたての奥を想像するのがいいんだとかそういうたぐいのでしょ?」
「さすが、ゆーりよくわかってるじゃない」
確かにそれは否定できないな、それも踏まえて修学旅行じゃ温泉の醍醐味だ。覗き見たいが理性で抑える、もし見たとしても見えるかわからないそんなドキドキ、俺も味わいたい。中学の時は温泉じゃなかったしその夢かなわなかったが……高校の修学旅行は楽しみたいもんだ。あ、もちろんのぞき見はしないぞ?雰囲気だけ、な?
「早くこの温泉に浸かってお酒飲みたいわ。あ、そうだ!ギルド開設祝いにパーティーしない?温泉に浸かりながら!」
「浸かりながら?!うーん……ありだな。よし、じゃあ買い出し行こうぜ」
「卵はどうする?」
「そうだな、パーティーの最後に出そうか」
さて、それじゃあちゃちゃっと買い出しに行きますかね
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