6話 初めてのレベルアップ
っしゃ、レベルアップ!
初めてのレベルアップがこんな状況になるとは思わなかったが、どれ……これは。
「悪い妖女さん、待たせた!」
「ふむ、もういいのか?」
「ああ、使ってみないとわからないが最低限町から放すことくらいはできそうだ」
「そうか、ならば【ギブ・オブ・ヘイト】」
ふむ、ヘイトを渡すスキルか、助かる。
「すまん、助かった!妖女さんがいなかったら多分死んでたし今度会ったら礼するよ!っしゃ、こいカブトムシ!」
「こちらも、よう....街を救うために当然のことをしただけだ。あとは任せました」
さぁ、今まではただ逃げるだけだったが今からは戦術的逃走だ。
「ひゃっほーう、やべぇ、こりゃ気持ちいいわ。やべ、早く行き過ぎた」
さきまでの追いかけっこは俺がただひたすら逃げるだけだったが、たった1レべル上がっただけでカブトムシを俺が追いかける側に回っていた。それほどまでにスキルというものの存在は大きかった。……うん、何言ってるんだろうな俺。そりゃあゲームなんだしスキルの存在が大きいなんてわかっていることなはずなんだよなぁ。
だが、なんにしろ俺はようやくこのゲームを始めたようだ。どれ、このスキルはどんな効果だ?ふむふむ。にしてもやっぱ現実じゃできないことをやるのがゲームだよな、スキルの影響か上がったステータスによって速く走れるようになって顔に当たる風が気持ちいい。
「ほらほら、早く来いよカブトムシ」
と、挑発をしているとその意味を理解したのか重装甲虫が飛び上がりこちらへと突進してくると一目でわかるような構えをする。飛行攻撃を避ける自信は正直あまりないが、ぶっつけ本番でスキルを使い何とか回避するしかない。
「Boooooooon,Gyaooooo!」
「ッ今、【スライディングチャージ】!」
重装甲虫がこちらへ突進してくる瞬間にスライディングで移動しながら次のスキルへとつなげるスライディングチャージを発動し、すぐさま前宙回避を使いさらに距離を
「うぉ、あっぶねぇ。何とか回避できたか」
頭のすぐ上を掠めて地面と激突した重装甲虫へと追撃を入れようとするが、衝撃破で吹き飛ばされて攻撃に移ることができない、それほどの衝撃が重装甲虫が地面と激突した際に発生する。
「まじかよ、あんなんくらったら俺でなくとも即死するだろ。あのスク水幼女耐えてたよな。実は結構強い人なのか?まぁいい、俺は生きてる。回避できることが証明された今することは一つ。よし、逃げよう」
もうここまで引っ張ってくれば町やNPCへの被害は大丈夫だし逃げる必要はないかもしれない。だが違う、ここじゃ戦いにくいから逃げるのだ。あっちは木々を気にせず攻撃してくるのにこっちは木や草が邪魔で動きが制限されるのは分が悪いから逃げるのだ。俺は、広い所で、勝つために逃げるのだ。ついて来い!カブトムシ。
なかなかない広い場所がないな、突進はスキル使わず走って回避、よしダッシュ。でかい木が見えてるし、とりあえずそこまで行くか。突進かスパンが今回は早かったな。突進はもう何十回も躱してるんだよ。あ、飛行攻撃は勘弁ね、肝冷えるし万が一のための回避スキルもなくなるから。
その後も突進をよけ続けたまに来る飛行攻撃も何とかすべて回避し続けること1時間ようやく目的としていた木へとたどり着いた。
「おぉ、すげぇ。ここが世界樹といわれても違和感がないぞ」
実際はこんな初期エリアに世界樹なんてたいそうな代物があるわけないだろうけど。それにしても、スカイツリーくらいあるんじゃないか?
「ここに来たのは正解だったな。大きな木の根元は養分が吸われてほかの植物が無いイメージだったが、その通りみたいだ」
大きな木を中心に東京ドーム1個分くらいの平原が広がっている。普通に冒険に来たものならば、その平原に咲き乱れるきれいな花と舞い散る落ち葉に心奪われていただろうそんな美しい光景が重装甲虫の巨体に踏みつぶされるたび失われていく。
すまない、花たち。これ大丈夫かな?町の人たちに怒られたりしない?しそうだなぁ。くそ、すべて重装甲虫が悪い。
「カブトムシ、鬼ごっこは終わりだ、お前のお望み通り
こちらの言葉を理解したわけではないだろうが、
「っち、回避スキルのクールタイムはもう少し....だが、いかに巨大な角だろうとそんな大ぶりな攻撃、簡単によけられるんだよ!なめんな俺のステータス!」
そう、余裕のあるうちにキャラUIを開き確認した所、レベルが上がりスキルと称号を獲得した俺のステータスはステ振りをしていないのになんかめちゃくちゃ上がっていた。まず、【逆境強化】という
要するに、気が付いたら無振りのステータスがスキルと称号の組み合わせで戦えるまで強くなったということで....
「っしゃ、ご自慢の角も当たらなけりゃあただの棒よ」
今まで一般人のまま戦っていたがステータスによる能力上昇の恩恵を受けた俺が、今更攻撃を食らうなんてことはない!
だが、ターボ付きの靴を初めて履いた人がその靴を履きこなしスムーズに移動できるかといわれたら不可能であり急激なステータス上昇により激しい攻撃をかいくぐり攻撃をさらに入れることまではできなかった。むしろ、回避に成功している時点でコーラの才能は高いというべきだろう。しかし、
「ぐはっ!」
角の攻撃に織り交ぜて足でのなぎ払いのようなひっかき攻撃を入れてきた重装甲虫の攻撃がついにコーラに命中する。いくらステータスが上がったとはいえ、相手はユニークモンスター。重装甲虫と比べて、防御や耐久のできるスキルもなし防具もなしのティッシュ装甲では受けきれるはずもなく、すさまじい勢いで地面へと、
「君、大丈夫かの?」
たたきつけられる直前に何者かに抱きかかえられた。
「あ、ありがとうございます。えっと……」
「自己紹介はあとででいいじゃろ。ちと移動するがいいか?」
「あ、はい。大丈夫です」
あぁ、ユニークモンスターが....でも、「私が賢者だ」って言いそうな見た目の人に抱えられた状態でニッコリ言われたら断れませんって。あ、逃げないんでそんな強く抱えなくていいっすよ。
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