第6話 エピソード②就職手前でズレ・
大学4年、学生最後の正月でしたが、東森シゲル君帰省できませんでした。本来ならば、就職も決まり故郷でゆっくりこたつに入り雑煮などを食べていたはずが、数年前からの就職氷河期にて、よほどのツテがない限り内定を貰えなかったのです。
専攻するゼミの中でも地元の卒業生は何とか決まっていましたが、県外出身には殆ど求人情報が無かったので、仕方なく地元長崎で活路を見出そうと1月中旬に帰省し、親や名士である菩提寺の住職などにもツテを頼ったみたいですが、無理だったようです。
憔悴した気分で、再び下宿屋の四畳半にもどりゼミの部屋に出向いたり、学部の事務室や友人たちの求人情報を集めていて数日が過ぎたある日、まさかの救世主が現れたのです。小学校から大学の学部・学科・ゼミに至るまですべて行動(進路)を共にしてきた例の小太りドラゴンが、シゲル君が見逃していたゼミへの推薦求人の案内を教えてくれたのです。渡りに船ですぐに担当教授の了解のもと応募をしたのです。
当日、緊張感丸出しの会社訪問にて新幹線高架下の全国規模会社の支店応接室で、担当部長の面接を受けたのです。一通りの内容で面接が終了し退席されたのでほっとしていたところ、書類を持ってこられ支店長が来るまでの時間でこの試験をやっておいてと言われ、シゲル君一人残されたのでした。一般常識の問題だったのですが、試験があるとは微塵にも思っていなかったため、解答できないうえに新幹線が通るたびに響くゴーッと言う音が気になって仕方なかったのです。
支店長の面接で確認されたのは、シゲル君の健康状態と、両親が健在かどうか?、赴任先や仕事はどこでも大丈夫かどうか? の3点が主だったようです。
その後数日が過ぎても面接を受けた会社から連絡がなく、筆記試験で落ちたなと感じていた頃、田舎から消防士の求人があるみたい?と電話があったのです。そこで、シゲルくんは失礼かなと思いつつ、直接会社に電話をかけてみたところ、事務員の方から、担当者が不在ですのでしばらくしてからまた電話をお願いします、と言われたのです。これはもう99.9%落ちたなと思いつつも、30分くらいしてから再度かけたところ、合格されてますので近々直接連絡があると思います、との吉報であったのです。人生どうなるか、神様もわからないのかな?、と仏さまに感謝でした。
田舎者二人、仲間と笑顔で卒業式に出席し、ようやく東海地方から旅立ったのです。
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