苦い砂糖菓子

藤嶋 柊樹(ふじしま ひいらぎ)

第1話 スイートホリデイ

「私はかわいいから。」「私は認められてるから。」

あいつの言うことには毎回腹が立ってうざかった。


はっきり言おう、私はあいつが世界中の誰よりも大嫌い!!



ー半年前ー

「あなたは見事オーディションに合格しました。」

そのメッセージを見た時の嬉しさは、人生の中で一番に近い嬉しさだった。

家族に話して一緒に盛り上がった後、ウキウキしながら自分の部屋で親友に電話した。

「オーディションどうだった?受かった?え、ほんと?よかったじゃん!おめでと〜!!」

明穂あきほは、喜んでくれた。

「あの頃の千郷ちさとの顔、顔は頑張って笑顔を作ろうとしてるんだけど、すごく寂しそうな顔をしてた。原因はなんとなくは分かってたから、その話題からは避けてたんだけど、もう時間経ったと思うから言うね。ありがとう、ごめんね、千郷。私のために、無理して笑顔を作らせて。」

「そうだったんだ。私こそごめんね。」

「大丈夫よ、それよりも一緒のステージに立てるまでお互い頑張ろ!」

「うん、ありがとう!」

それからも話はずっと続いて、朝までやっていた。明穂との電話は久しぶりだったから、つい時間を忘れてやってしまった。


ー合格の連絡から2年前ー

私は明穂と一緒にアイドルグループのオーディションを受けた。

結果は私が落ちて明穂が受かった。

そのオーディションの後、明穂は言った。

「千郷の分まで頑張るね、私!」

悔しさを必死に隠して私は言った。

「絶対人気になってよね!」

その時の私の顔は、口を紐で引っ張ったみたいに無理やり口角をあげていた気がする。

私が笑ってれば、明穂は気にしない。

そんな気がしただけ。

明穂を傷つけたくないの一心で、私は明穂と別れるまで笑顔のままでいた気がする。

でも、実際には明穂にバレてた。

明穂は、親友だ。お互いのことなんか親よりも知ってる。そんな明穂に隠し事なんかできるはずないのは、わかってたはずなのに。


明穂との電話で、やる気になるスイッチが入ったのか今ならなんでもやれる気がしてきた。

明穂は尊敬できる人間だ。私よりも必ず先にいる。いなきゃいけない。

私も、明穂に追いつくために必死に必死に頑張った。


初レッスンまでの2週間、私は明穂から色々なことを聞いた。明穂も私と同じくらい気合を入れてくれたから、最後の3日間は2人ともゾーンに入ったように静かで集中してた。

緊張せず、無理せず、気にせず。

初レッスンの前日、明穂は私にそう言ってくれた。


明穂とは、ずっと親友でいたい。

そして、いつまでも憧れの存在でいてほしい。










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苦い砂糖菓子 藤嶋 柊樹(ふじしま ひいらぎ) @yuruyuru_2275

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