第10話

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 全ての始まりは、降星暦零年のことだった。静寂たる暗闇には無数の星が降り注ぎ、数億年という時をかけ、生物が繁栄する大地が生まれた。


 水が生まれ、草木が芽生え、動物が生まれ……そして最後に、人々が産声をあげた。人類は持ちうる知恵を駆使し、時に諍いながらも、手を取り合い生きていった。大自然の脅威に怯え、未知の事象に一喜一憂し、与えられた数十年の生を駆け抜ける。今より遥かに不便だったが、今より遥かに平和な世界だった。


 しかし、三百年後にそれは崩壊した。白銀の髪と紫苑の瞳を兼ね備えた、“魂晶師”と名乗る”異形の者”が現れたからだ。過去に同様の例が発生したケースは一件たりともなく、その出自を含め詳細は謎のままである。ただ一つだけ確かに言えるのは、その者のもつ“神秘の力”により、人類の心には“知恵故の欲望”が芽生えたということだ。


 “神秘の力”は恐ろしい。不可視かつ不明瞭である人の魂を、瞬く間に手に取れる輝く石へと変えてしまう。その人智を超える妖しい煌めきに、一人また一人と取り憑かれてしまった。ある者は「死者の復活の呼び水」として。またある者は、「自身の権力と畏怖の象徴」として石を求め、異形の者に頭を垂れた。


 その様を見ていた人々は、更なる被害者が増えることを恐れ、大陸に舞い降りた全ての異形の者を処断した。秘密裏に「無垢の人間の心を脅かす、邪悪なる侵略者」と烙印を押し、彼らに勘付かれぬよう一人ずつ、「感恩の儀」と称した墓へと招き入れた。


 仔細は凄惨たる内容であるため、記録として残されていない。しかし伝聞によれば、ある者は撲殺、ある者は毒殺され……たとえ言葉も話せぬ赤子だろうと、聖罰を止めることはなかったという。


 そうして異形の者は、一人残らず姿を消した。


 血の雨が降った百年後。人々は多種多様な思想を持ち始め、世界は七つの“国”を形成した。これにより世界の基盤が完成し、人々には真の安穏が訪れたのだった。


 だが我々は忘れてはならない。今に至るまでに、数多の犠牲を払ったことを。そして償いとして願おう。彼らの魂の穢れが祓われ、来世で幸せを得られるように。


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【降星暦_千四百年】


人々は思想や外見の相違により 七つの国と十三の村を作り上げた


最低限の貿易や外交こそあれど どの国も閉鎖的であり 能動的に振る舞うことはなかった



【降星暦_千五百年】


ここで遂に 一つの国が動き始める 大国の“ルベール”であった 紅の国は 軍事力で他国を牽制

対して六つの国は緊急会合を開き 今後の対処法について 連日舌戦を繰り広げた


その渦中 大国“エレウス”が ひとり重い腰を上げる

商業に長けた碧の国は 船による貿易を取り止め 経済制裁を加える対処をとった


遅れをとった五つの国は それぞれの強みから 紅の国に制裁を加えようと動き始める


一方 このままでは戦争が勃発すると 危惧した国があった 大国の一つ “スティア”である

白の国は他国との条約を制定し 共通の法のもと等しく罪を裁く役割を担った


残りの国も異なる役目を担い これにより世界は 互いに抑制しあう均衡がうまれた


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【国について】


各国にはそれぞれ 象徴たる色がある 瞳の色が 出身により異なっているからだ


ルベールは“紅の瞳”と“茶の髪”

プネレぺンは“碧の瞳”と“金の髪”

イルミスは“白の瞳”と“桃の髪”

クーヴィアは“緑の瞳”と“黒の髪”

ジェンは“金の瞳”と“赤の髪”

テトは“黒の瞳”と“緑の髪”

スティアは“桃の瞳”と“青の髪”


髪の色も異なっており 文字通り一目で どこの国の出身か そして純血か否かが判別可能となっている

一方で村は 瞳の色及び髪色に統一はない 七つの国の落伍者の集まりだからだ


なお 上記の色に該当しない瞳は禁忌の存在とされる

生まれ持った色を“上書き”する行為も身分詐称の罪に問われ かつての異形の者と同等の処罰を受けることとなる 


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