第9話 天井裏でいつまでもなにやってんだ。

〈異世界〉。


 そんな言葉が綴られていた城戸橋先輩のノートを、さらにめくる。


「で、さらにこれ、なんだと思います?」


 身の回りに起こったことの走り書きが終わった辺り。

 その次のページから、また妙なことが書かれていた。


 妙な、というのは正しいのかどうか。


 私たちは読めないので。横書きで、右から読むのか左から読むのかもわからない。

 でもなんとなく規則性があるように見える。おそらく〈文字〉なのだ。

 そしてここから先、ノートはずっとこの〈文字〉で埋められている。


「私たち、城戸崎先輩の周辺とか、〈入寮式〉のこととか調べていくうちに、こんな話も聞いたんです」

「『天井裏は、卒業するときに記念で、とかを理由に都合の悪いもの捨てていく人がいるんだろうねー、〈入寮式〉で、へんなもの見つける確率が高いの、やっぱり天井裏なんだよねー、面白いのよー、今年はなくて残念ねー』、って」

「え、じゃ、幸田先輩、転校記念に天井裏に制服一式を?」

「……それはないんじゃないですか。リユース先がいくらでもあるのに」

「へんなの」

「どちらにしても、正直私たち、中間考査の結果を犠牲にしそうですよー」

「なので一度、この噂の多い天井裏、じっくり見ておきたいと思ったんです。なるべく城戸橋先輩のことと学校のことを知ってる複数の目で。何かまた見つかるかもしれないし」


 なんだかラノベみたいなことになってきたわ。寮の天井裏で、異世界?


「もしもーし」

「ええっ?」


 天井裏の入り口の蓋があいた。

 で、声かけてきたあなたは誰ですか?

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