第7話 思い出を勝手に天井裏に捨てるな。
「学校の外での城戸橋さんのこと、って言っても」
寮生だから時間通りに帰ってもらってたし、学校とも話し合って学業に響かないように忙しいランチの時間だけ来てもらってたし、いい人だなあとは思ってたけど、そんなに知っているかと言われると自信ないなあ。
「いやあ、その前にちょっと衝撃が大きいわ」
あたしは腕組みをして、大きなため息までついた。
「ポエムよ」
まさかあんな片想いポエム書いてたなんて。やっぱり知らない面の方が多いわ。
「そうよねえ」
矢口がうなずいた。
「しかも中学の時の片思いなのよ。よく引きずるわね」
今さっき、どんな手段で取ったのかわからない外泊許可で出ていった挙句に男女関係の修羅場を避けて戻ってきたような矢口に言われる城戸橋さんが、なんか気の毒な気がする。
「バイオリンで音大の推薦取れるだろうって言われてて、成績もいいし、面倒見もいいし頼りがいあるのにそこは
かわいいカフェでバイトして、なにか出会いとか成長があったのかなあ、とか思ってたんだけどね」
ひとりでいつまでも城戸橋さんを語りそうな矢口は置いておく。
「それより〈異世界〉って、どういうことなんだろ」
このノートには、気になる記述がいくつもある。
「はい。そこがまさに、私と北さんがノートを隠すことにした理由です」
こっぱずかしいポエム数ページのあとで、取り乱したような走り書きがあり。
〈ここは異世界みたい。
そして。
おそらくだけど、鈴蘭寮の一部は時々、この世界につながっている……〉
「で、この〈幸田ミナミ〉って誰よ」
「はい」
滝川さんがスマホを取り出した。
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