第3話 入寮式①

 矢口と滝川さんは中等部からずっと寮にいるから、矢口がこうして割り込みしてこんなことを話しかけてくるのもおかしくはないんだけれど。


「え、あ、〈入寮式〉の話? あれね、北さんと滝川組のが一番荒れたよね」

「荒れた?」


 今年の〈入寮式〉は先月、入学式の翌週末に行われたそうなの。


「部屋ごとの二人組で、くじ引きで当たった場所に行って、そこに置いてあったものを取ってくるの。

 あたしと名取さんが洗濯室で、普通でつまらなかったんだけど、」


 名取さんが二層式の洗濯機を知らず、そっちのほうが印象深かったって。

 ていうか寮の洗濯機、二層式なんだ?


「北さんと私が二階の天井裏」

「それで荒れた」


 何が荒れたんだろう。


「天井裏から、取ってきたものに問題があったのよねえ」


 北さんの話し方には緊張感がない。


「これなのよ」


 取り出されたのは、一冊のノート。

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