第24話 2024/03/30 困惑

 昨日はCTスキャンの撮影があった。イロイロとゴタゴタして散々な目に遭ったのだが、まあ愚痴はやめておこう。病院も人間の動かしている組織だ、常に完璧とは行かない。


 で、その帰りに業務スーパーに立ち寄り辛子明太子や柴漬け等々を買った。明太子と言ってもちゃんとタラコの形をしているものではない。中身だけが袋に詰まった安いヤツである。元々辛子明太子は大好物だったので楽しみに帰宅したのだけれど、夕食で一口食べて首をかしげた。


 もの凄く辛いのだ。いや、明太子だから辛いのは当たり前、ただ問題は辛いだけな点だ。


 味覚は戻りつつある。辛味はもちろん、甘味も酸味も苦味もわかる。旨味も感じ取れているはず。なのにそれらを総合した「美味しさ」がわからない。もっと言えば不味さもわからない。味に快も不快も感じられない。ただ辛いとか甘いとかがわかるだけだ。


 これは医師に確認した訳でもない個人的な素人考えなのだが、放射線治療で一度壊れた味覚は味蕾の機能が回復する段階で過去の情報がリセットされたのではなかろうか。つまりいま私の口の中にある舌は、味覚に関して赤ん坊のそれと変わりない。積み重ねられた味の記憶が失われている。


 無論、記憶の大半は脳に刻まれているはずなので、今後食事の数をこなすことで味に関する記憶も回復する可能性はある。そうであってくれなくては困る。しかし一足飛びに元通りとはならないようだ。もう一ヶ月やそこらは味覚に困惑しながら食事をする日々が続くのかも知れない。


 困惑と言えば、抗ガン剤治療の影響だろうが腎臓の機能が低下しており、血液検査の数値的にはかなり悪い。そのせいでトイレ関係、主に排尿関係で非常に厳しいことになっていた。しかしいまさら泌尿器科にかかりたくはない。これ以上病院に金と時間を注ぎ込むのは勘弁して欲しいのだ。


 そこでイロイロ思い悩んだ挙げ句、八味地黄丸を試してみることにした。市販薬は処方薬より割高だが、処方箋が要らないし効かなければ自己判断で使用を中止できるので気楽だ。漢方だからな、即効性は期待できないが一週間くらいで効果が見えてくれば御の字か。なんてことを思いながらAmazonでポチった。


 で、結論から言えば初日から明確に効果が現れた。こんなに効くものなのか、漢方薬。もしかしたら奇跡的に体質に合っていたのかも知れないが、あまりの効果の高さに困惑してしまうくらい見事な結果だった。これはもう手放せない。ただ第二類とは言え医薬品だからな、サプリメントよりは値段が高い。継続するにはいま使用しているサプリメントを一つか二つやめる必要があるだろう。あちこちガタガタの体の持ち主としては、なかなか悩ましいところである。


 さて、次に何か動きがあるとすれば再来週の診察か。しばらくはのんびりできるだろう。まあ、そんな気分にならないのは目に見えているのだけれど。

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