「恋人」の目覚め(Side:光梨)
夫が家を出て、朝の家事が一通り済んだところで、
「
「ひかりぃ……こっち……」
布団の中でモゾモゾする沙枝に呼ばれ、光梨が愛しさと面倒くささを5割ずつ感じながら布団のそばに腰を下ろすと。
「んん~~!!」
布団から出てきた沙枝が、光梨の腰に抱きついてくる――のは良いのだが。光梨のTシャツの中に頭を突っ込んでくるのは、成人女性としてどうなの。
「はいはい、沙枝ちゃん起きようね」
光梨は呆れを無視しつつ、お腹に頬をすりつけてくる沙枝の頭をTシャツ越しに撫で、――起こすためだと割り切って、沙枝の尻をぺしぺしとたたく。
「きゃん、ふふっ」
楽しげな声を上げつつ、ボサボサ頭の沙枝がTシャツから顔を出す。
「光梨、おはようのチュー」
「歯磨きしてからね」
「はぁい」
見隅沙枝。光梨の幼馴染みにして義妹、そして多分、恋人と呼ぶのが相応しい人だ。
光梨は生まれて間もない頃から、母に連れられて見隅家に出入りしていた。5歳上だった
だから、沙枝との間に根付いた習慣について、光梨は疑うことが少なかった。沙枝は光梨と離されるのをひどく嫌がることも、沙枝と光梨の持ち物はお揃いだらけだったことも。沙枝が二人きりになると光梨とキスしたがることだって、光梨にとっては変なことではなかった。
ただ大きくなってくると、いくら仲が良くても友達同士でキスはしないものだと学ぶようになる。いけないことなのだろうと、感づくようになる。
ただ、二人はやめられなかった。
沙枝はシンプルに、何もかも自分が光梨の一番じゃないと気が済まなかったのだ。キスが「一番好きな人と」するものであるなら、沙枝にとっては光梨こそ相手に相応しい。
そして光梨も、特に取り柄のない自分のことを無条件で「一番」にしてくれる沙枝のことは、どうしても可愛かったのだ。
二人だけの秘密のスキンシップは止まることなく。思春期を過ぎた辺りからは、沙枝の性的な意識はぐっと強まり。
なしくずし的に、肉体関係と呼べる段階を通りすぎていったのが、中二の頃だった。
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