LEVEL.22 言えた謝罪、本当の気持ち



ラヴィはギルド国家の郊外より、少し離れた場所にある“千年樹”とも呼ばれた大きな“桜”が常に咲き誇る丘へと来ていた。



「“サクラ”ちゃん」


「あーあ、見つかちゃったなぁ……」



“千年樹”の根元で座り込んでいるロゼッタ(?)は、歩いて近寄ってきたラヴィを見上げては少しだけ残念そうな表情を浮かべていた。



「すごいね、おにいさん!“サクラ”の名前の事も、“桜”が咲いたここに来れるなんてっ!すごいねー!すごい、すごいっ!」


「“サクラ”ちゃん、キミは“5年前の魔導列車事故”で亡くなった子供だね?」


「うん、そうだよ」



ロゼッタ(?)は立ち上がっては少しだけ悲しそうな表情をしては、真上を見上げては舞う桜の花びらを見つめていた。



「此処ね、みんなとの大切な思い出がある場所なのっ……帰ってきたら、また此処に行こうってママと話をしていたの」



【ねぇねぇ、ママっ!】


【ん?どうしたの?】


【帰ったら、また“あそこ”に、みんなとピクニック行きたいっ!】


【ふふっ、そうね……じゃあ、帰ったらパパに謝らないとね?ちゃんと】


【あ……】



ロゼッタ(?)は列車の中での出来事を思い出しては、瞳からは沢山の涙が溢れてきていた。



「“サクラ”っ、パパとケンカしたのっ……」


「…」


「その時に、思ってもいないのにっ……“大っ嫌い”って言っちゃったっ……!全然、きら、いじゃない、のにっ……」


「だから、5年間も“父親”の様子を眺めていたんだろ?」


「アレックスさん」



ラヴィは声がした方を軽く振り向けば其処には、アレックスと共に“サクラ”の父親が立っては此方を見ていた。



「本当に、さ、“サクラ”なのかっ?」


「パパ……」


「本当に、すまなかった!叱ったまま、謝らずにっ」


「ううんっ、違うよパパっ……“サクラ”が、ママ達と居たいってだけで……ワガママを言ってっ、パパを困らせて……な、なのに、パパのこと、“大っ嫌い”なんて、言っちゃってっ!」



ロゼッタ目を閉じてフラついて倒れそうになるが、カルマとラヴィが二人してロゼッタを支えると同時に淡い光の球体がロゼッタから出ていくと、“サクラ”の父親である男性の前に浮遊して近寄ると其処には幼い少女が地面へと降り立ち父親を見つめては泣いていた。



「ごめんなさい、パパっ……“大っ嫌い”なんて、言っちゃってっ!本当は、そんな事、思ってないのっ」


「あ、あぁ、わかってる……“サクラ”は、パパもママもお兄ちゃんも弟も大好きな娘だもんなっ……パパこそ、叱って悪かったなっ」



“サクラ”が大泣きしていると父親は優しく“サクラ”を抱きしめるようにすると、淡い一筋の朝日の光が空から優しく降り注ぎ二人を包んでいるような光景である。



「パパ、“サクラ”は……かえるね」


「っ……、“サクラ”っ」


「“サクラ”も、ママも、みんなっ……パパのこと、うらんでなんて、いないよ!」


「っ、ぅ……」


「だってっ、みんなも、“サクラ”も!パパのこと、“大好き”だから!だから、ちゃんと前を見て生きてっ?じゃないと、みんなで、おこるからね!?」



“サクラ”が浮遊して空へと浮かんで父親から離れていくと、父親は号泣しながらも手を伸ばすが“サクラ”は涙を流しながらも満面な笑みを浮かべて手を振っていた。



【ありがとう、お姉ちゃん】


【ありがとう、お兄ちゃん達】


【最後に、パパに謝れた!本当に、ありがとうっ!バイバイっ!】



“サクラ”が空へと光の粒子となり消え去るとロゼッタは目を覚ましては、明るくなった空を見つめては優しく笑みを浮かべてから目を閉じる。



ー凄い速かったお兄ちゃん、お姉ちゃんを護ってね

ーお姉ちゃん、これから大変なの

ーだから、お兄ちゃん


「…………言われなくても、俺は護るよ」


ーえへへっ、お兄ちゃん達なら大丈夫そうだねっ!



ラヴィは空を見上げては小さく呟けば、カルマの方を見てからロゼッタの頬を優しく撫でる。


ラヴィ達はギルド国家へと戻れば、シャルルによって治療を受けたロイドとシュヴァートの二人から謝罪の言葉をしつこいぐらいに聞かされていた。



「ロゼッタさん」


「シュヴァートさん?」


「話はロイドから、全部聞かされた……本当に、すまなかった!」


「いやいや!シュヴァートさんは徹夜を何日もしていたのは、ロイドさん達がサボったりとかしていたのが原因でしたしっ!それに、私の件や殺人鬼の一件もあったわけだからっ」


「そうだったとしても、気を許していたのは俺の方だ……本当に、怖い思いをさせてしまった」



シュヴァートは医務室のベッドの上で正座をしながら頭を下げていて、それを目の前でされているロゼッタは何とも言えない気持ちでいた。



「申し訳ないって思っているんでしょー?シュヴァート」


「あ、あぁ……そうだが、シャルル先生?」


「それなら、“収穫祭”2日目だしロゼッタちゃんを連れて市場に行ってみたら?2日目にしか無い出店とか、あったりとかするし」


「え、そうなの!?」


「うん、そうだよ?だから、ロゼッタちゃんの護衛をしながらロゼッタちゃんに何かを奢ってあげれば?」


「そ、そうかっ……それならば、早速行こうっ!ロゼッタさんっ」


「え、あ、はいっ!?」






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