LEVEL.10 道具屋出張所




退院した日、その日の夕方。


シュヴァートの執務室へと訪ねに来たロゼッタは、部屋へと案内されソファーに座っては紅茶の入ったティーカップを見つめている。



「すまないな、突如として此処へと呼んでしまって……」


「い、いえっ」



ロゼッタは執務室の部屋を見渡してみれば、机の上には山積みの書類やらファイルなどが多く置かれている事に気付く。



(この人、社畜だ)


「急に呼んだのは、ちょっとロゼッタさんに提案を提示したくてな」


「提案、ですか?」


「あぁ、統括者のレヴァンさんからの1つの提案なんだが……このギルド国家の本部に“道具屋の出張所”を作りたいって話になったんだ」


「えっと、父さんの??」


「あぁ、ヴェテルさんの道具屋の出張所として設立しようって話なんだが……勿論、ヴェテルさんからは許可は得ている」



シュヴァートはロゼッタが入院中に、ロゼッタの両親と会議をして色々と条件を付けながらも話し合いをしていた。


勿論の事だが、ロゼッタの母親であるライザから怒りの抗議はあったのだが説得を昨日まで行った事で、どうにかライザとヴェテルから許可を得ていた。



「まぁ、父さんや母さんが許可をしたならアタシは別に大丈夫です」


「そうか、なら書類にサインをしてもらっていいか?」


「あ、はい」



ロゼッタはシュヴァートから書類を数枚受け取り、その書類の中身を確認すれば“道具屋出張所”についての内容とロゼッタが店員としてギルド国家にて住み込みで働くという内容である。



「住み込み??」


「あぁ、ヴェテルさんが家の改築工事をしたいからって」


「あー、なるほど??」


(まぁ、色々とボロっちい感じになっていたから……いい加減直そうって所なのかな?)



ロゼッタは書類の最後の行に自分の名前を記入してから、その書類をシュヴァートに手渡すとシュヴァートは受け取りサインを確認するとファイルへとしまう。



「これで、本日からロゼッタさんは此処の“仲間”となった」


「“仲間”……」


「これから、宜しくな?“道具屋さん”」


「あ、はいっ!」



シュヴァートが満面な笑みを浮かべて挨拶すると、ロゼッタは何処となく嬉しそうにしながらも元気に返事をする。



「そこで、“道具屋”として客が必要な材料ってのは把握しておきたいだろ?」


「あー、そうですね……父さんに発注する道具とか把握、しておきたいですね」


「そう思ってな、主に道具を使用している“討伐士”達から話を聞いた方がいいと思って……呼んではいるんだ」


「“討伐士”??」


「今居るのは、2人だな」



シュヴァートは椅子から立ち上がるとロゼッタの側へと来ては、ロゼッタを連れて執務室を出ていくと“雑談室”へと向かうと豪快な笑い声が聞こえてくる。



「アハハハハハッ!ダメだなー、シイナ!あと一步だったんだろぉ?」


「そうなんだよ、リカルド!もー、最悪っ!!」


「楽しそうな会話中、悪いけど2人共」


「んあ?」


「へ??」



シュヴァートが雑談室へと入れば、薄めのピンク色の髪色で毛先が赤色をさせた少しだけ長めのショートで、少し切れ長な目ツリ目をしたピンク色の瞳をしている。

作業着な感じの服装をした職人気質で、常にフラスコなどを腰に身に着けている青年が壁に寄りかかっている。


その近くの椅子に朱色の髪色をして緑色のリボンで束ねたロングポニーテールにしており、青色の瞳色をしたやや切れ長に少しツリ目をしている。

少し露出しているトレジャーのような服装を着ている少女が座っていた。



「リカルド、シイナ」


「あ!もしかして、ヴェテルのお店の話をしに来た??」


「あー、なんか言ってたな……って事は、シュヴァートさんの後ろに居るのがヴェテルさんの娘さんか?」



リカルドはシュヴァートの後ろで此方の様子を見ていたロゼッタを見つければ、シュヴァートは少し横にずれるとロゼッタは軽くお辞儀をする。



「えっと、“道具屋出張所”の店員をするロゼッタですっ!」


「おう、話は聞いているぜ?なんか、色々と災難だったみたいだな?」


「はははっ………、そうですねー」


「アレでしょ、必要になる道具のリストアップでしょ?」


「はいっ、それを聞きに来ました!あ、メモをするのでっ」


「おうおう、んじゃー……そうだなー」



ロゼッタはリカルドとシイナから、“討伐士”で必要になる道具について話を聞きながらも取り出した手帳にメモしていく。



「そうだ、ヴェテルさんは“魔導具”とか作れていたよな?」


「あ、父さん?そうですねー、作れますよ」


「こういうのとかも、用意出来るか聞いてくれん?」


「ふむふむ…」



リカルドは思い出したかのように“魔導具”の注文ついてロゼッタに話をしては、シイナに耳打ちをしてはシイナは頷いていた。



「確かに、そういうのも必要になるかも」


「あったらあったで、便利になると思うんだが……コレもいいか?」


「“小型のインカム”??」


「おう、今は多少大きいのが王都には売ってはいるんだが………高価で買えづらい」


「なるほど?でも、同じ感じになるんじゃ……それって??」


「いや、材料はギルド国家の“討伐士”側で集めてくる」






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