「雲」の世界で
花宮零
プロローグ
ピピピ。ピピピ。
無機質なアラームの音が部屋に響き渡る。
「起きてるの?もう七時よ。学校は?」
この会話をするのはもう何度目だろうか。学校に行きたくなくても
「起きてる。行ける。平気」
としか言えない。
お母さんの離れていく足音を聞きながら私はため息をつく。
『学校』
学校という場所は、私にとって
*
きっかけは分からない。ただ、朝目覚ましが鳴り、いつもの様に起きようとすると体が動かない。学校へ行こう、そう思うだけで涙が止まらなくなる。ただ焦ることしか出来なかった。学校へ行かなければ。そんな思考とは裏腹に、私の体は石のように固まって動かなかった。どうやったら休めるだろうか。仮病を使おうか。麻痺した脳で必死に考えていると、お母さんが
「8時だけど、大丈夫?」
と部屋に入ってきた。大丈夫じゃない。学校へ行きたくない。でもこんなことを言ったら心配させてしまう。色々な思考が
しかし母の顔を見ると、複雑な思考は全て吹き飛び
「学校に行きたくない……」
ただ一言、口をついて出てきたのだった。
お母さんは驚いたように目を見開いた後、
「どうしたの?」
と訪ねた。理由も聞かれず、ただ学校に行きなさいと言われると思っていた私にとってこの一言は救いだった。
私は、学校へ行こうとしても体が動かないことを伝えた。
結局この日、学校へ行くことは出来なかった。
今日だけだろう。そう思っていた私の考えはとても浅はかであったと、この後気がつくのだった。
*
私の名前は
そんな生活の中、私は不思議な体験をした。
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