愛を注ぐ 2023/12/13

 家に帰って先ずやることは金魚の餌やりだ。

 この金魚は、息子の金魚すくいでもらわれて来たのだが、息子は世話に飽きて私が世話している。


 金魚たちは、私が帰ってると、待ってましたと言わんばかりに催促してくる。

 こちらにも準備というものがあるのだが、全くお構いなしだ。

 そして充分な餌を食べれば、用がないと言わんばかりに知らんぷり。

 薄情なものである。


 次にやるのは水換えだ。

 金魚はよく食べるのですぐに汚れる。

 なので2週間くらいで一回くらいで水換えするのが普通だが、ウチの金魚はよく食べるので、すぐに汚れてしまう。

 本当は餌を制限すべきなんだろうけど、金魚の催促に負けて沢山あげてしまう。

 だから割と頻繁に水換えをしている。


 汚れた水を吸い上げている間、金魚は特に反応しない。

 まるで、息子の部屋の掃除している時の、息子の様子そのものである。

 食べ物も掃除もやってもらって当然。

 熱帯魚のことを自分の子供という人がいるが、言いえて妙だ。

 

 水換えするたびに思うことがある。

 金魚はこうやって世話をしてもらっていることを、感謝することがあるのだろうか?


 なんか少しだけきれいになったな―、と思ってってるだけなのだろうか?

 息子に置き換えて考えたら、それであっている気がしてきた。

 たまには感謝の言葉くらい欲しいが、無いものねだりだりろうか。


 何だかなあとも思いつつ、カルキ抜きした水を入れようとして、あることを思い出す。

 今日は金魚のために糞を分解するバクテリアを買ってきたのだ。

 カルキ抜きした水に混ぜる。

 効くかは分からないが、メーカーを信じよう。

 そしてゆっくりと水槽に注ぐ。

 愛情たっぷり(?)のバクテリアだ。

 じっくり味わうといい。


 そんな私の気遣いも全く気づかないように、金魚は悠々と泳いでいた。

 そんな様子を見てると、なんだかどうでも良くなってくる。

 まあ、元気であればそれでいいのだ。


 そう言えば、今日は息子のためにジュースを買ってきたのだった。

 愛情たっぷりのジュースなんだけど、やっぱり感謝の言葉は無いんだろう。

 そのことに不満に思うんだろうけど、でも美味しそうに飲む姿を見たら許しちゃうんだろうな。


 そんな事を思っている自分が妙にだけおかしい。

 少し笑いながら、私はコップにジュースを注ぐのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る