僕らはいつも夢うつつ
シオン
プロローグ
今日は朝から死ぬほど眠くて午前中の授業は半分くらい机と仲良くしていた。寝る気はなかったが気づくと机に顔が触れている。
幸いにも午前中の授業の先生は厳しい人はいなく、寝ていても何も言わなかった。つまり無言で成績が下がっていってるという話だ。だがそこに関してとやかく言うつもりはない。俺がずっと夜ふかししてゲームしてるのが祟っているだけだ。すべては自業自得。
そんなこんなで昼休みだ。
「よっ」
友人の七月琥珀がこちらの机の方にやってくる。俺の席は窓側前から三番目。琥珀の席は廊下側二列目の後ろから二番目。周りに女子がいるために琥珀が離れた瞬間、席を占領している。幸いにも昼休みが終わる前にどくから、特に琥珀に支障がない。
「よっ」
「奈津、お前国語の時間、ほぼ全部寝てなかった?」
「ぐっ、見てたのか……」
見ようと思わなきゃ見れない距離感だから、バレないと思ったのだが、案外にもよく見てるらしい。これはますます先生に無言で成績を下げられてる説が有効になってきた。
「いや、列で順番に当ててたのにナチュラルにお前だけ飛ばしたから」
「……そう言えば、真山はそんなことしてくるタイプだったな」
「ほんとにな!」
力強く琥珀が答えた。さてはこいつ何かされたな……?
「この間さ、僕遅刻しそうになったんだよ。で、まぁ走ればギリギリ間に合うかなぁって感じだったから廊下走ったのよ」
オチが見えた。もうこれは完全にこれから言うことが分かってしまった。
「そしたら真山がさ、運悪く歩いてて『走るな! 何故走る!』って言われて『いやでも遅刻しそうなんで』って言ったら『遅刻しそうになるような時間に来るな!』とか言われて、あーもうマジでなんなの、あのババア」
国語科真山……未愛とかそんな名前の先生。生活指導も兼任していて俺も何回か生活指導でブチギレられたことがあって好きではない……って。
「あれ、今日国語あったっけ?」
「朝言われたろ? 数学が国語になったって」
「あ〜、そうだっけ?」
覚えてない。というか真山なのにキレられなかったってことはマジメに結構な点数を下げられた可能性が高い。
「はああ……」
「もしかして成績気にしてる?」
「もちろん。逆に気にしない生徒がいるのかよ」
「……僕?」
何故気にしない。成績は大事だ。午前中に爆睡していた俺が言えることではまったくないが。
「まぁいいや。飯、食べちゃおうぜ」
そう言って弁当箱を開いた。
「……はっ!」
目を覚ます。弁当を食べたことまでしか覚えてないが、今は一体何時なんだろうか。そう思いながら外を見ると、夕方だった。教室は誰一人存在しなく、部活とかの音も聞こえない。教室の前に掛かってる時計は五時を指していた。
部活も終わったのか。なんて思いつつ、立ち上がる。なんで琥珀も起こしてくれなかったんだろう、などと思いつつ、机の横に掛かってる鞄を取ろうとした。が掛かっていたのはすごく小さな鞄だった。
中には財布と携帯、そして謎の黒色のカードケース。開けると白いカードに『カードキー』と英語で記されていた。『二四〇一』とも書かれている。出席番号が書いてあるのはなんなのか。というか、このカードキーはどこで使う代物なのか。俺の勉強道具はどこへ言ったのか。全て何も分からない。
と、扉が開いた。息を切らして琥珀が入ってくる。
「やっといた! まだ戻ってなかったから心配したんだけど」
「琥珀。なんで起こしてくれなかったんだよ」
「寝てた……ってこと!?」
琥珀がそう言った。いや、分かるだろ。午後の授業はどっちも厳しい先生の授業だったから一回くらいは起こされたはずだ。それを起こさなかったって事実を隠すために知らなかったフリをするのはなんだか白々しい。
「いや、知ってるだろ? 大体午前中寝てたのだって知ってたじゃないか」
「え……午前中?」
意味が分からないみたいな声を出される。
ああ、もしかして、夢か? これはいわゆる明晰夢ってやつか。つまり、この夢は俺が午後の授業中に見ている夢。だから話が食い違うんだ。そりゃあそうか。
「いや、午前中は」
「ごめん。やっぱなんでもないわ。どこ戻るんだっけ」
ここで夢と指摘してしまえば目覚めてしまう可能性があるそれは避けたくて俺はとりあえずそう聞いた。
「戻る場所忘れた? 寝ぼけてる?」
「いや分からん。記憶がすっ飛んでる」
「ああ、なるほど」
何故か納得された上で少し悲しそうな顔をして、すぐに元の表情に戻す。きっとこの夢の世界では俺が記憶をすっ飛ばすような何かがあったに違いない。都合が良すぎるが。それでもこの世界は夢の世界だからご都合主義なのは仕方ない。
「地下だよ。荷物持ってついてきて」
琥珀はそう言ってあるき出した。俺もその後に続く。
夢の中で意識を持ったことなんてないが意外と現実とそっくりなんだな、という感じがする。
そのまま学校の階段を一階、二階、三階、四階分降りる。俺らの教室は二階だから、ちゃんとしているなら、ここは地下二階だ。
と、階段の横に銀の扉があった。重たそうに扉を開けて琥珀が中に入り、そのまま開けておいてくれたのでそのまま入る。
その中は街だった。いや、街ではないかもしれないが俺にとっては街に見えた。白く四角い一階建ての建物が街のように並んでいる。すべての建物に何も変化はないように見える。琥珀が一つの建物の前で止まった。
「ここが奈津の部屋だよ。基本的外出はもうしないこと。わかんないことあったら、僕に聞いて」
そう言って去っていった。おそるおそるカードキーを扉の横にある黒い物体にかざすと、電子音がした。ドアノブに手をかけて扉を開く。
建物内は六畳くらいの部屋だった。キッチンが端についている。玄関から部屋までのほんの少しの通路のとこにトイレがありそうだった。ユニットバスかもしれない。
とはいえ、この夢はよく分からん。
設定とか何もない。俺が把握できたのは学校に住める、という事実だけだ。
眠い。寝るか。そう思って俺は床に寝転んだ。
僕らはいつも夢うつつ シオン @saki_hikage
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