第31話 事態急変
『さてさて諸々の話は一度置き、とにもかくにもアリスちゃんのレベル上げをしましょう!』
紆余曲折したが俺達の本来の目的は一ノ瀬アリスのレベルアップだ。
一応、俺が影魔術とかいうクソマイナー魔術を試している間に、アリスも自分の魔術の使用感を確かめていた。そしてそれは問題なく発動していた。
後は討伐対象の魔獣を見つければいいだけだが。
『ちなみに私は有能な聖剣なのでマスターが魔術に現を抜かしている間、辺りに魔獣がいないか
「いつの間に……嫌に手際が良いわね」
アリスが若干呆れるようにも感嘆の声を上げた。
相も変わらず図々しいヤツだ。こいつ自分のことを二回も有能とか強調しやがりましたよ。もはや呆れを通り越して更に呆れちゃうね。
しかし流石聖剣といったところではある。こいつ多機能にもほどがあるだろ。
『ふふーん、マスターはこの超絶優秀美処女天使である聖剣ちゃんをもっと褒めてもいいんですよ?』
「ハイハイスゴイデスネー」
まぁ調子に乗ってウザそうなので口が裂けても言葉にはしないけど。
『むっ! マスターの分際で生意気ですー』
『別に魔獣の気配ぐらい魔剣ちゃんでも察知出来るし~』
「はいはい、それでその魔獣はどこにいるのさ」
『あ、それは彼処の茂み辺りですね。少し大きめの岩陰に隠れて此方を伺っているようです』
「本当にいるわね……」
あっ本当だ。
確かに聖剣ちゃんが指す場所である岩陰の端から、毛の塊らしきものがはみ出していた。
「ブルルルルル……」
魔獣のほうも此方に隠れていることを気づかれたと察知したらしい。岩陰からノソノソとその身を露にさせた。
『あれが今回の討伐魔獣である
現れたそいつは端的に言えば角付きの猪という感じだった。まんまだな。
しかし日本に生息していたソレと比べると一回りも大きいし、何より頭部に強大で武骨な一本角が存在した。
猪の突進力にあの大角が合わされば分厚い鋼板ですら貫いてしましそうだ。おっかないことこの上ないな。
しかし俺達には安心安全なステータスや魔術がある。決して倒せない相手じゃないはずだ。
「ブルルルルルッ」
「どうする一ノ瀬? 向こうはやる気満々みたいだけど、俺のほうで先に弱らせておこうか?」
「いえ、まずは私一人でやらせてもらえないかしら」
そう言い彼女は前に一歩だけ踏み出た。
……若干、声が震えているな。彼女に露骨にバレない範囲で構えてすぐ動けるようにしておくか。
「行くわよ」
「ブルルルルッ!」
そして彼女は魔角猪に向けて左人差し指を真っ直ぐに突き出した。
「
彼女の人差し指に炎が収束するように集まり人頭程度の炎塊が形成された。そのまま炎魔術は勢い良く魔角猪に向け一直線に放たれた。
「おおっ」
しかし驚くのも束の間。ここで事態は予想だにしない方向へと転換した。
『あ、それキャンセルで☆』
「……え」
聖剣ちゃんの場違いなほど明るい声がこの空間を無遠慮に凛と貫いた。
魔術は問題なく発動した。アリスの人差し指から放たれたそれはそのまま行けば間違いなく魔角猪に直撃したことだろう。
しかしその魔術は次の瞬間、あえなく空中に霧散してしまったのだ。
戦闘中にもかかわらず、あまりにも唐突すぎる出来事に俺はもちろんアリスは呆然としてしまった。
つまりアリス目掛けて突進しつつある魔角猪を遮るものは無くなってしまったことになる。
今更必死になって手を伸ばしたところで遅い。あまりにも遅すぎた。
そして無慈悲にも魔角猪の角がアリスの腹部を勢い良く貫いたのだった。
◆
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