第27話 俺なんかやっちゃいました?の汎用性は異常
「おいおい駆け出しのルーキーが何一丁前に依頼書なんて見てんだよ!」
アリスのレベルを上げるべく冒険者ギルドの討伐依頼書を見ている最中。突如として絡んできたのは、スキンヘッドが特徴でガタイの良く自信に満ち溢れた表情の男だった。
「偶にいるんだよなぁお前みたいな命知らずの勘違い野郎がよぉ」
周りの人間も受付嬢ですら此方に注目こそするものの止める気配はまるでない。猫耳受付嬢に至っては自分の仕事は終わったと言わんばかりに、退屈そうに欠伸をしていた。仕事しろ?
あーやだやだ。これだからこの手の界隈は倫理観皆無で嫌なんだ。PTAとか無駄に煩い現代を見習って欲しいね。いやそれは違うか。
「えっとどちら様です?」
「ガハハハハ! この俺様を知らねぇとはとんだモグリだなぁおい!」
そんなこと言われましても。
「おいおいあのルーキー、あのカマセ・ドッグスに絡まれてやがるぜ」
「不運なこった。そういやカマセの奴、Aランク昇級が目前らしいぜ」
「おいおいまじかよ。獄炎のカマセって二つ名も伊達じゃねぇってことか」
おぉナイスモブ。
近くのテーブルで酒を飲みながら話す冒険者達が頼んでもないのに懇切丁寧に解説してくれた。この解説モブムーブ、あまりにも芸術点が高くて拍手を送りたいほどだね。
「おいなに固まってやがんだモヤシ野郎。もしかしてビビッてやがんのか? まぁこの俺様相手じゃしょうがないよなガハハハハハ!!」
これまた芸術点の高いイキリ具合だ。単に芸術性に感動していただけだが否定するのも面倒だしそれでいいか。
「しかしこのモヤシ野郎、生意気にも女連れかよ。おい姉ちゃん、そんな冴えない奴なんか放っておいて俺のところに来いよ! ガハハハハ!!」
うわぁ。
やっぱり本当にこういうこと言う奴っているんだぁ。引くわ。
しかしそこは一ノ瀬さん。
「お生憎様。私はそんなに安くないの、貴方なんてまっぴら御免よ」
異世界でも何のその。告白してくる有象無象をバッタバッタと切り伏せていた学園時代と同様に、カマセ氏を一刀両断した。パネェ。
「てめぇ! ちょっと可愛いからって調子乗りやがって!!」
カマセ氏はまさかそこまでこき下ろされると想像していなかったのか、顔を真っ赤にして激昂した。
あーこれは不味い。カマセ氏は今にもアリスに殴りかかりそうな勢いだ。まさに一触即発。
「聖剣ちゃん聖剣ちゃん」
『おん?』
「ちょっとお耳を拝借」
まぁ耳なんてないけど。ゴニョゴニョゴニョ。
『はぁはーん。マスターも中々の
「うっさいぞ。じゃあよろしく」
ともかく準備は万端。そろそろリアルファイトに突入しそうだし不味そうだ。満を持して、
「ハイハイ失礼しますよっと」
俺は自分が今出来る最高のドヤ顔を決めつつ、カマセの前に飛び出した。
「あぁん? モヤシ野郎は引っ込んでやがれ!」
このクソ野郎は俺のことを取るに足らない雑魚と判断したらしい。鼻で笑いやがった。
「まぁまぁ。俺の連れが大変失礼だったのは申し訳なく思うけどさ。残念ながら彼女は貴方様には微塵も興味がないらしいから仕方ない。今回はご縁が無かったということで、ね?」
「……テメェ、一度吐いた唾は飲み込めねぇぞ?」
額に青筋を浮かべたカマセの掌の上に赤黒い炎が噴き出した。
この炎が獄炎と言われる由縁なのだろう。その威力はまるで知らないが、周りの反応から決して低くないことが窺い知れた。
だが恐るるに足らずってヤツだ。
『えい☆』
「なんだテメェ、この炎を見てニヤニヤとしやがって。ひょっとして恐怖でイカれ……んなぁ!?」
カマセ氏は目を大きく見開き素っ頓狂な悲鳴を上げた。
何が起きたかと言えば、突如として彼の掌から噴き出していた獄炎が消し飛んだのだ。
「な、なんで消えやがった!? こ、この! このこのこのっ!!」
彼が何度力んだところで再びそのご自慢の獄炎が出る気配はまるでなかった。まぁ俺がキャンセルしているから当然なんだけど。
聖剣の魔力拡散性能。それは絶対龍種の息吹ですら簡単に霧散させた。カマセ程度の炎など朝飯前だろう。
「おやおやぁ? 随分と自信満々だったけど、どうしたのかな? もしかして朝からしこたま酒でも飲んだ???」
「く、くそが! 覚えていやがれよ!!」
そしてカマセ氏は俺の煽りにこれまた芸術点の高い捨て台詞を吐いて、そそくさと冒険者ギルドを後にした。
残された周りの野次馬や受付嬢達はポカンとするばかりである。アリスだけはやりすぎと言わんばかりに額を抑えて嘆息していたけど。
「おいおいまじかよ……」
「一体全体何が起きたんだ……?」
「あの新進気鋭と言われたカマセ・ドッグスがあのひ弱そうなルーキーにしてやられただと!?」
ひ弱というコメントは大変余計だが野次馬達の動揺がこの上なく心地良い。
あれ? 俺またなんかやっちゃいました?
これぞ異世界転移のテンプレ。調子に乗っている荒くれ冒険者をチートで捻じ伏せドヤ顔を決め込むである!!
ン、キモチイイーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
◆いかがだったでしょうか。
「期待できそう」「影人の今後の活躍(苦しむ様)を見たい」「割と面白い」――などと感じていただけたら、
フォロー&★★★(星3つ)の評価にて応援して下さい。
レビューを書かなくても星だけの評価を入れられるので簡単です。
ぜひお願いします。
フォロー&星は、作者が喜んで、毎日更新する馬力が出ます。
可能な限り毎日更新するので、応援よろしくです……。
星を入れる場所がわからなければ、トップページ(
https://kakuyomu.jp/works/16817330667808128473)にどうぞ。ここから★だけ入れれば評価完了! レビューなしでも★だけ入れられるので、面倒はないです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます