第25話 冒険者ギルドって現代で言えば非正規も真っ青な労働環境だよね
冒険者ギルド。
それは一攫千金を夢見た冒険者達が集い、日夜しのぎを削りあう場所だ。ギルドでは様々な依頼を受けることが可能で、その内容は薬草採取から魔獣討伐など多岐にわたる。上手くやれば万が一にも大金持ちになることも可能だろう。
つまり冒険者ギルドとは夢と希望に溢れた場所と言っても過言ではないのだ!
正直ぶっちゃけると、日本で言えば非正規の派遣社員も真っ青な労働環境だが、そこは愛と希望のファンタジー。そんなことを言うのは野暮というやつなのだ。
え? 労働基準法? 知らない子ですね……。
『おっと。ここが宿の女将さんに聞いた場所そうですね』
一先ずの行動方針を決定した俺達は目的地へと向かうべく宿を飛び出た。当然聖剣ちゃん達はアイテムボックスの中だ。変に注目を集めるのは御免被るしね。
目的地には出発の直前、冒険者ギルドへの行き方を抜かりなく女将さんに聞いたおかげもあり迷うことなく到着することが出来た。
冒険者ギルドは剣と杖が交差するように描かれた看板がでかでかと飾られ、周りと比べると一際大きい建物だった。本当に無駄に大きい。なんか他の建物との比率がおかしいもの。
「ごくり……こ、ここが噂の島か……」
「島? 普通に建物だけど何を言っているのかしら?」
「あっはい。なんでもないです」
ネタ発言したらマジレスで返されたでゴザル。一番ダメージ高いやつだこれ。そうだよねアリスに古の戦場ネタは伝わらないよね。
『いいから中に早く入ろうよ~魔剣ちゃん退屈~』
『聖剣ちゃんも右に同じく~』
「はいはい分かったから中に入ったら君達は黙っててね」
言われるがままに建物の中に入る。
時間帯的にはまだ朝だがそこそこの人がおり、ほぼ全員の視線が此方に集まった。アカン陰キャ的にもう帰りたい。クソが、陰キャは黒板の前に立つみたく視線を集める行為がなにより苦手なんだぞ。
「案外、中は綺麗なのね」
アリスが呟いたように建物内は意外にも清潔さが保たれていた。
奥の大きなカウンターに十人くらいの受付嬢がおり、左側にはたくさん紙が張り付けてある木のボードがある。右側は酒場エリアのようで、丸形のテーブルがいくつも設置してあった。
とりあえず空いているカウンターの前へと立つと。
「いらっしゃいませニャ! 今日はどんなご用かニャ?」
ピンク髪で頭から猫耳を生やした受付嬢が大変元気良く声をかけてきた。
「一ノ瀬一ノ瀬、猫耳がいるよ」
「えぇ私も正直驚いているわ。流石異世界といったころかしらね」
俺は脳天に雷が落ちたと錯覚するほどの感動と衝撃を覚えた。しかもアレだ口調まで完璧ときた。なんというか猫耳はオタクにとってロマンなのだ。
アリスの俺に対する視線が若干厳しく感じなくもないがロマンなのでしょうがない。しょうがないったらしょうがない。
「なんか凄い邪な気配を感じるニャー。そういうの良くないと思うのニャッ!」
「あっはい。すいません」
「分かればよろしいニャ。それで今日は何の用ニャ?」
「冒険者登録に来たんですけど」
「分かったニャ。でも銀貨一枚かかるけど大丈夫かニャ?」
「あっはい払えます。二人分でお願いします」
例の如くアイテムボックスから銀貨二枚を取り出し猫耳受付嬢に渡した。
「……悪いわね」
アリスはなんとも申し訳なさそうだ。正直、王国から拝借したものだしどうでもいいんだけどなぁ。まぁこればっかりは慣れてもらうしかないか。
「確かに銀貨二枚戴いたニャ。じゃあこの用紙に記入するニャ!」
渡された用紙を見ると、いくつか記入欄がある。名前と性別、年齢、種族と職業か。後は特技等などのことを自由記入出来るみたいだ。
「まーぶっちゃけて名前さえ書けばおっけーニャ。特に職業とかなんて持ってない奴がほとんどだしニャ! あ、一応調べることも可能で、その場合銀貨一枚必要ニャ」
「あ、別にいいです」
なるほど。この認定の緩さ、門番のおっちゃんが勧めるわけだ。おっちゃんの発言が正しければ大したことない金銭で簡単に身分証明書の代わりが手に入るわけだし。
ちなみに異世界転移得点なのか俺を含めたクラスメイト全員が職業持ちだ。まぁ一ノ瀬は無能と揶揄されるものらしいし、俺なんて勇者(陰)だが。ろくでもねえよ。
それでも職業持ちであることには変わりなく、それが判明すれば無駄に注目を集めてしまうことだろう。逃亡中である俺達にとってそれはとてもよろしくない。職業に関しては未記入にしておいたほうが良さそうだ。
「じゃあとっとと書くニャー」
猫耳受付嬢に渡されたペンを取り必要事項を記載していく。異世界転移特典なんだろうか。なぜかこちらの言語での会話や読み書きができた。たまには王国も良いことをする。基本的にクソだけど。
『あ、登録名は家名なしのほうがいいですよ。この世界だと家名は貴族ぐらいしか持っていませんし』
そんな聖剣ちゃんのワンポイントアドバイスもあり、俺達が用紙に記載した名前は「カゲト」と「アリス」だ。
ふと思ったがこの場合、アリスのことは名前呼びしないといけないんだろうか。いや無理だな。無理無理カタツムリ。女子を気軽に名前呼び出来るなら陰キャなんてやってないぞ。
「よし記載しおわったかニャ。ふむふむ記載内容も特に問題なさそうニャ!」
用紙をうけとった猫耳受付嬢は此方に向けて両手を広げ、
「改めて――ようこそ冒険者ギルドへ。私達は貴方達を心から歓迎するニャ」
そう笑顔で告げた。
かくして俺達の冒険者ライフが始まったのだった。
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