第23話 近頃はなんでも安易に美少女化する②


「とりあえず服を着てよ」


 聖剣ちゃんと魔剣ちゃんがまさかの美少女化。もうなんか意味不明なので放っておくことにした。

 それよりも問題は一ノ瀬アリスだ。同級生しかも美少女が全裸でいるこの状況、俺の精神上とてもよろしくない。マジでヤバい。

 仕方ないので俺の上着を羽織らせた。風邪ひかれても困るし。


「それは私にまったく魅力がなくて抱く価値もないということかしら。それはそれで少し、いえ相当にショックなのだけれど」


 もちろんそんなことはない。気を抜けば俺の理性のタガはぶち壊され狼と化してしまうだろう。それは不味い。非常に不味い。


「違うそうじゃないんだ。そもそもそういう目的で一ノ瀬を連れてきたわけじゃない。それにほらそういう関係になるとなんかフワッフワッする気分になっちゃうじゃん」


 仮にこんな形で童貞卒業したところで、聖剣という名の付加価値のおかげでしかない。それ以上の意味はないし、俺自身が非モテの陰キャであることに変わりはない。


 だからやはりこんなことをしても意義なんて何一つないのだ。


 後アレ。仮にしたところでその後どういう顔していいか分からないし。そんなコミュニケーション能力あれば隠キャなんてやってないぞ。


「ふぅん? じゃあ明星君にはどんな高尚な目的があるのかぜひご教授して頂きたいところね」


「えっもしかして怒ってる?」


 なんかアリスの言葉の端々に棘を関する。属にいうチクチク言葉ってヤツだ。


「怒ってない」


「本当に?」


 怪しいところだ。過去の経験上、学校の先生も女子も大抵こう言うのだ。話したら話したでバチクソ怒るのにね。


「ナンパ男みたいにしつこいわね。怒っていないと何度言わせたら分かるの?」


「あ、はい」


 遂には絶対零度の視線を向けられてしまった。こうなっては頷くほかない。……やっぱり怒ってるじゃん。


『そういうの止めたほうがいいですよマスター』


『女心が分からないマスターって哀れよね。ザーコ♡ザーコ♡』


 更には聖剣ちゃん達もアリス側に回ってしまった。影人知ってるよ。こういう時、女に逆らってもろくなことにならないんだ。


「コホン、単刀直入言うよ。今、俺は信頼出来る仲間が欲しい。端的に言えばレベルアップして強くなってくれ」


 流石に俺もこの異世界を一人で生き抜けるとは思っていない。


 俺は思うのだ。

 いくら自分が聖剣や魔剣という伝説的武器を所持していても。レベルアップにより高い身体能力があったとしても。そんなものをいくらあったところで闇討ちや毒殺されてしまえば無意味だ。


 そんな時に重要なのがやはり信頼できる仲間だ。完璧ではないが相当のリスクを減らすことが出来るだろう。そして彼女であればその役割を問題なく全うしてくれる。そんな確信があった。


「後、あれ。一ノ瀬って確か金持ちだったよね?」


「えぇ。まぁ正確には私の家がだけれども」


「ならその線で取引をしよう。日本に帰ったら働かないで済むほどのお金をくれたりしない? 具体的には三億ぐらい」


 今現在、方法は不明だがいずれは日本に戻るつもりだ。その時にお金があればとても嬉しい。沢山あればなお嬉しい。三億もあれば今後働かないで悠々自適な生活を遅れること間違いなし。絶対に働きたくないでゴザルゥ!!


「本当にそれでいいのかしら。私がその約束を守るとは限らないけれども」


「いや守るでしょ。君なんだかんだ義理堅そうだし。それにそんなことされたら聖剣ぶっぱするだけさ」


 そんな俺の発言にアリスは肩をすかすような動作をした。


『一応私は神聖な聖剣なんで、あまりそういう使い方をして欲しくはないのですが……』


『えー! どうせならそこは魔剣ちゃんにしとこうよー!』


 何を今更言ってんだ。神聖さを主張するなら銀行(国庫)強盗を示唆するんじゃない。


『え、というかマスター帰るつもりあったんですか?』


『えーーークソザコマスター帰っちゃうのーーー!? や、止めたほうがいいよぉ。どうせ戻っても構ってくれる女の子とかいないよぉ?』


 やかましい。

 俺にはまだやり終えていないゲームがあるのだ。くそぅファイナルクエストの最新作が控えてるんだぞ。ふざけんな。


「あーじゃあ君らもついてくればいいんでない?」


 もはや死なばもろともいうやつである。どの道、聖剣ちゃんは装備者が死亡しない限り取り外し不可だし今更だ。魔剣ちゃんについては直接聞いたわけじゃないが、どうせ同じ感じなんだろう。


『ふむ。マスターの世界は面白そうなのでアリですね』


『元の世界に戻っても相手してくれる女の子いなさそうだもんねぇ~どうしてもって言うなら行ってあげるぅ♡』


 どうやら話が纏まったらしい。


 えっ。

 自分で言っておいてアレだけど本当についてくるつもり?



 ◆



『それでヤラないんですか?』


 話が落ち着いたところでこのクソ聖剣、原爆級の発言を投下しやがった。お前マジふざけんなよ。


『だ、だから! こういうのには順序とかムードとかが……』


 あれ? おかしいな?

 何故かこの中で唯一まともなのがまさかの魔剣ちゃんだよ。メスガキなのにね。


「そうね。私もこのままじゃ女として引き下がれないわ」


「い、イチノセサン? 何言ってるんでせう?」


 ちょっと待て。もっと淑女としての嗜みを持て。お前らにじり寄ってくんな!


 ア、ア――――――!!!!!









◆いかがだったでしょうか。



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