第3話 【悲報】最近の聖剣は喋るらしい

『ここですよ、ここ。こーこ!』


 突如と聞こえた謎の声。俺がそれに困惑していると何故か手元の聖剣は何かを主張するように点滅し始めた。この声の主はまさか……?


『だからそうだって言っているじゃないですか。マスターは察しが悪いですねぇ』


 やっぱり声の主はこの聖剣からみたいだ。まじでか。


『えぇ何せ私、聖剣なので!』


【悲報】最近の聖剣は喋るらしい。


 しかも周りの様子を見るにこの声は俺にしか聞こえていないみたいだ。俺の心の声に反応して話している。


 どーしよ、俺のろくでもない思考が筒抜けじゃん。


『ムフフ、マスターもスキモノですねぇ』


 お れ の な に を み た。


 事と次第によっては訴訟辞さない。


 あ、でもここ異世界じゃん。司法も糞もない。クソが。


「ところで勇者様……いえ筆頭勇者様」


「へぁ!? あ、はい」


 聖剣の声に困惑していると今度は王女が声をかけてきた。もう勘弁してくれよ。

 彼女のまるで生ゴミを見るような目線はもはや遠い過去の話。


 今や超ニコニコして俺を見ている。他の人達に見えないようにこっそりと手まで振ってくる始末だ。ところで筆頭勇者ってなに?


「それでは筆頭勇者様、今後の予定についてお話したいのですが。出来ればこの後に私のお部屋にてじっくりと」


 そ、それは。控えめにいって童貞な俺からしたら大変ありがたいお誘いといいますかね。ゴクリッ。


『あ、止めといたほうがいいですよ。あの王女から邪悪な気配を感じます』


 えっ、そういうの分かる感じなの?


『えぇ何せ私は聖剣なので。一家に一振、超高性能スーパー神話級武具なので!』


 なんだコイツ。口調は一応丁寧なのに無駄にアピールしてくるな。


 でも正直いらないんだよなぁ。だって勇者とか柄じゃないし、要は戦争しろってことでしょ?


 やだやだ超やだ。


 俺は日和った現代クソジャップなので戦争とかそういうのとか無理無理カタツムリ。


『うーんおかしいですねぇ。マスターみたいなタイプが勇者とかに選ばれるとそれはもう見るのがイタいぐらいに調子に乗ると聞いたのですが』


 それどこ情報源ソースだ。


 間違いないんだけど! 全くもって完膚なきに間違いないんだけど!!

 陰キャはすぐ俺なんかやっちゃいました? とかやりがちなんだけどさぁっ!!


「――聞いていますか勇者様?」


 気がつけば目の前で王女は怪訝な表情を浮かべていた。ご機嫌斜めというやつだ。やべ脳内会話に興じすぎた。


「あ、は、ハイっす」


 王女はどう思ったのかは知らないが一応納得してくれたらしい。


「約束ですよ? さてさて勇者の皆様方、立話というのも難です。この王宮を案内しつつこの世界について詳しくお教えしましょう」


 そして機嫌を直してくれたのか。彼女は鼻歌を口ずさみながらクラスメイトの面々たちに声をかけ始めた。た、助かったぁ。



 ◆



 その後、改めて詳しい世界情勢やらの説明を受け各自部屋を用意され休憩及び就寝となった。


 内容? うん。ミソスープって感じ。


 しかしそんなことどうでも良いぐらいにすんごい豪勢な部屋なんだけど。ベッドには天幕がついているし、部屋の中心には無駄に大きなシャンデリアがこれまた無駄に煌めいている。まぶし。


 普通俺みたいな陰キャってテンプレだと質素でみすぼらしい部屋をあてがわれるもんじゃないの。筆頭勇者特典半端ないな。


『まぁ、マスターは仮にも勇者ですからね。当然の対応だと思いますよ?』


 勇者かー勇者ねー。

 いまいちしっくりこないんだよねぇ。ていうか今更だけどマスターってなに?


『そりゃマスターはマスターですよ。大変光栄なことですし感謝してくれてもいいですよ?』


 この野郎。

 ちなみにこの聖剣、先ほどは頭に直接話しかけていたが今はキチンと声を出して話をしている。見た目ゴリッゴリの剣なのにどうやって声を出しているかは知らないけど。


「光栄どころかむしろ迷惑なんだけど。だいたい俺は陰キャなんだから勇者とか柄じゃない」


『まぁまぁ。確かマスターの国の言葉で一編托生、死なばもろともサーチアンドデストロイとかあるじゃないですか』


 そんな言葉は存在しない。何それ、死ぬぐらいだったら全部殺すみたいな殺意マシマシな言葉に変貌してるじゃん。こわ。


『むふふ(ФωФ)』


「むふふじゃないし……ふぁ。お前と会話してるとなんか頭痛くなってくるわ。疲れたからもう寝る!!」


 聖剣の滅茶苦茶な発言に頭を悩ましていると急に眠気が込み上げて来た。色々と疑問は止まないが今はとにかくどうしようもない程に眠い。俺は疲労と眠気に逆らうことなくベットに倒れ込んだ。


『……お休みなさい千年の因縁と策謀渦巻く動乱に巻き込まれてしまった哀れなマイマスター。せめて今だけは安らかに』


 意識を失う直前聖剣は何かを言ったような気がしたが。俺は強烈な眠気により上手く聞き取ることが出来なかった。


 ちなみにだが王女の誘いは当然ながらぶっちした。









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