第2話 ここはアニメの世界なんかじゃない!現実世界だ!!

「っぶね、俺轢かれそうだったわ」


こういうことである。普通、アニメのように轢かれそうになってる人を反射で押して助けるなんていう芸当が普通の人間にできるはずがない。だって間に合わないもの。そして押してもそんなに吹っ飛ばすこともできないし一緒に轢かれるのが関の山。


後、大抵の人間は赤信号に気づくだろうし、気づかなくても車がブレーキをかけるか誰かが声を掛けるかして歩道に誘導するだろう。そう簡単に事故が目の前で起きるものじゃない。


だが私は違った。そう簡単に起きる状況ではない状況に至っている。

何故なら異世界に転生したくて死ぬ覚悟で人を助けようとする人など滅多にいないからである。私は今危機に瀕していた。だが流石に私に気づいて急停車してくれるだろう。私はそう信じていた。


怖かったからだ。逃避したかったのだ。道路に出てもそう簡単に轢かれるわけがない。そう思っていた。


『轢かれる直前なのにも関わらず』


「ブッブーー」


「いや!!怖い!!たすけてぇえええええええ!!!」


「ドン」


怖い怖い。これ死ぬやつだ。いや、もう死んだか。いや、目が開く。さっきまで真っ暗だった視界が少しずつひらけてきた。状況を確認しよう。まず手は動く。足は…動かない。感覚もない。神経がやられてしまったか。


くっ、そんなことより息ができない。痛すぎて呼吸が苦しい。アニメではこういう時、轢かれた瞬間に意識を失って転生するものだけど…流石にそうはいかないか。そんなに都合よく一瞬で転生するわけないもんね。


うわ、血が出てきてる。肋骨が折れてお腹から突き出しちゃったのかな…と言うことは肺にも突き刺さってる可能性があるな。だから息ができないのか。終わったな。


え?救急車まだこないの?リンゲルマン効果?誰かが呼ぶから大丈夫だろうと思って誰も呼んでないパターン?


それは違う。苦しいから時間が長く感じているだけで実際はそれほど時間が経っていないので、救急車がそんなに早くくるはずがないのだ。


ここはアニメの世界なんかじゃない。私が間違ってた。そもそも異世界に転生できると言う発想自体が間違ってたんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る