第13話

カイルとギルドへ戻ったロゼは仕事が出来る受付嬢の部屋へ報告しようと歩いている途中でカイルが足を止めると一言だけ告げた。

「今日こそ告白します!」

ロゼは微笑んだまま黙って見つめていた。

カイルの表情はとても真剣なものになっているが彼が視線を向けている対象は自分ではないことを知っているからである。

そんなロゼの様子を見たカイルは少し照れながら呟いたのである。

「そ、そんな目で見られると恥ずかしいじゃないですか……」

そんな様子を見て思わず笑みを零しそうになったが何とか我慢することが出来た。

(ごめんなさいね、カイルさん)

胸中では謝罪しながらも彼の恋路を陰ながら応援することにしたのである。

タクミ 7日目(冬)

前回の仕事を依頼達成としたのが間違いだったのかは不明ではあるが私が森にいるゴブリン討伐の依頼を受けようとしていた時も係の男が問題なく受理していた。

(悪意でやったわけではないと思いますが……ちょっと不満ですね)

という訳で今回はより難しそうな依頼を受けることとしたのだ。

(というわけで達成はしばらく先になっちゃいますが、それでもいいですかね~?)

そんな私のつぶやきが聞こえていたわけではないだろうが受付嬢であるロゼさんがいつもの優しい笑顔で声を掛けてくれたのである。

「何かお仕事をお探しですか?」

彼女に話したいことがあった為、今日は依頼を見るよりもまずは顔つなぎから始めることにしようと決めたのです。

(だってそれが出来れば仕事の効率が上がるかもしれませんからね……)

幸いなことに最初に受けたギルドランクはアップしていて何とか対応できる依頼内容が増えていた。

「実はですね……」

と話し始めたところ、すぐに彼女は私が何をしたいかわかってくれました。

「少しお待ちください」

ただ話し終わると同時に彼女は部屋の奥の方へ走り去ったあと、戻って来るまでしばらく待つことになりました。

(まぁ早い分にはいいのですからゆっくり待つとしましょうか……)

そんなことを考えつつ周囲を見回しているとカイル君やロゼさんの他に何人かの方が忙しそうに動き回っている姿が確認できましたね。

(ふむ、朝のピーク時間という事もあって大変なのかもしれないですね)

そんなことを考えている内に彼女が戻ってきたのです。

(相変わらず仕事が早いですね……)

私が感心していると彼女は嬉しそうに手にしている書類を私に見せてくれた。

「これが、あなたが探していらっしゃる仕事ですね」

見てみると私がやってみたいと思える依頼内容が記されていたのである。

(私はこれを受注したい)

そんなことを考えた時でした。

何故か彼女と目が合ったと感じた瞬間、私に向けてウィンクをしていたのであった。

(ロゼさん……?)

(え……あれ……?なんで私……?でも……)

彼女の行動の意味が分からずに私が戸惑っているといつの間にか彼女は受付カウンターへ戻って行っていた。

(うーん……ロゼさんには申し訳ないですが私はこの仕事を受注するかそれとももう少し難易度の高い依頼を……)

そう思っていると彼女がトテトテと走り寄ってきたのである。

「タクミさん?何を見るんですか?」

そんなことを言われてしまえばこのままこの依頼を受けざるを得ない状況へと追い込まれていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る