第5話

「あと5分寝かせてくれよ……」

私が苦笑しながら毛布をかけなおすとカイル君は再び寝息を立て始めた。

(ふむ、昨日もそうだったがこの子は意外と寝起きが悪いようだ)

私は身支度を整えると部屋を出た。

階段を下りると食卓には村長の姿があった。

「おはようございます、村長」

「おお、タクミさん」村長は私を見るとにっこりと微笑んだ。

その隣にはロゼの姿もあった。

彼女は朝食の準備をしていたらしい。

「おはよう、ロゼさん」

私は彼女に挨拶を返した。

そんな私に村長が話しかける。

「ロダの村へようこそ、タクミさん。ロダの村はあなたを歓迎しますよ」

村長の言葉に私は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、お世話になります」

そんな私を見て村長は首を横に振った。

「いやいや、こちらこそタクミさんには感謝しているのですよ」

そう言って村長はにこやかに笑った。

私には何のことだかわからないが……何かしたのだろうか?

「おはようございます」

ロゼの声が聞こえたので振り返ると朝食の準備ができたらしい。

2人の女性がテーブルに料理を並べているところだった。

テーブルにはパンとスープ、サラダが置かれていた。

美味しそうな匂いが漂ってくる。

(うむ、今日も美味そうだ)

私が席に着くとロゼがお茶を淹れてくれたので礼を言った。

するとロゼは嬉しそうに微笑んでくれた。

(いい娘だな)

「ところでタクミさん」

村長が私に話しかけてきたので私は食事の手を止め村長の方を見た。

「はい?なんでしょうか?」

「実は折り入ってお話がございまして」

村長は何かを言いづらそうにしていた。

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