目が覚めるとそこは異世界でおじさんはどう思うのか
みなと劉
第1話
異世界でおじさんは何を思うのか。
そのおじさんのお話をしよう。
異世界生活一日目(冬)
1日目
「おい、おっさん。いつまで寝てるんだよ」
不機嫌な声で、私は目が覚めた。
「……君は誰?」
目を開けると目の前には不機嫌そうな少年がいた。
年の頃は10歳前後といったところか。
短い金髪にやや吊り上った青い目。
傷の多い軽そうな革鎧を身に着けている。
手にはショートソードを携えていた。
ここはどこかの家の中だ。
部屋の隅には焚火の跡があり、その傍にはソファが置いてある。
その上に私は寝ていたようだ。
「俺はカイル、冒険者だよ」
「冒険者?」
「おっさん、辺境の村から来たんだろ?ここら辺じゃ見ねー顔だからな」
異世界だ。
私は確信した。
どうやら異世界に転移してしまったらしい。
だが、パニックにならずに済んでいるのは目の前に少年がいたからだ。
見知らぬ場所に一人ぼっちではないと言うだけで安心できる。
おじさんは少しだけ冷静さを取り戻していた。
「あ~、すまない。ここはどこなのか教えてもらえるかな」
「はぁ!?やっぱり辺境の村から来たんじゃねぇか。ここはロダの村だよ」
カイル君は呆れた様に頭を掻いた。
「この家の人が倒れているおじさんを連れてきてくれてな」
カイル君は部屋の外に目を向けた。
それにつられて私もドアを見る。
するとドアの向こうから若い女性が現れた。
「目覚めたんですね、よかったです。大丈夫ですか?」
女性は私の顔を見て心配そうに尋ねた。
年齢は20歳くらいだろうか?
腰まである長い栗毛。
透き通るような白い肌にやや吊り上った琥珀色の瞳。
美しい女性だった。
「あ、はい、大丈夫です」
「お腹は減っていませんか?よかったらパンとスープを温めますね」
女性はそう言って部屋を出て行く。
「ロダの村?」
「そうさ、辺境にある小さな村だよ」
カイル君は肩をすくめて見せた。
どうやら私は異世界召喚ではなく異世界転移してしまったようだ。
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