キネマ森ミニ〜映画の記憶が眠る場所〜

涼森巳王(東堂薫)

イケメンには毒がある



 基本的に映画はテレビで見る派。映画館まで出向いて見たのは、これまでに二本しかない。


 なので、その映画も深夜帯のテレビ番組で見た。

 テレビで見た映画って、ほぼタイトルをおぼえてない。とうぜん、監督の名前もよくわからない。そこまでの映画マニアというわけじゃないんですよね。映画のレビュー的なものを期待する人にはガッカリさせてしまう内容になってます。


 それでも、僕の性格形成、とくに小説形成には何かしらの影響をおよぼしてるなぁと思う今日このごろ。テレビドラマはけっこう忘れちゃうけど、映画はずっと昔に見たものでも、しっかりストーリーをおぼえてたりする。


 ここはそういう記憶の名残をとどめる場。

 映画のストーリーをあらすじのようにまとめるのって、プロット作りの練習にもなると思うんですよね。

 とうぜん、ほとんどはなので、内容が間違ってたら、ごめんなさい。僕の記憶のなかではそうだってだけの話です。記憶の作用が創作にどうかかわるか、そういうエッセイです。


 というか、今日、朝ご飯食べながら、なぜか、ふっとその映画を思いだしたので、なんとなく書いてみようかなと。映画って日常のふとした瞬間に出てきますよね。確実に心の滋味になっている。


 前述のとおり、タイトル思いだせない。監督も思いだせない。フランス映画だったと思う。フランス映画は芸術性が問われるのか、文学っぽい話が多いんですよね。


 仮に映画1としときましょう。映画1はサスペンス調の恋愛ミステリーでした。以下、あらすじ。



 あるところに平凡なヒロインがいる。フランス映画の平凡は、自立した大人女子です。たいてい、あるていど美しい。オサレ。(ブルネットのロングヘアー。グラマラスなアラサー)美男美女の出てこないフランス映画なんてあるのか?


 ヒロインは仕事にいっしょうけんめいで、彼氏がいなかった。ある日、ぐうぜんのきっかけで、すごくイケてる青年(ブロンドのツンツンヘア。細身のキレイな顔立ち。ヒロインより少し年下かも)と出会い、交際が始まる。


 彼はイケメンで優しく、ほんとに素敵な人。毎日が楽しくてしかたないヒロイン。幸せな日々。この人とずっといっしょにいたい……。


 彼の姉にも紹介され、二人は婚約までこぎつける。


 ところが、そのころから身辺におかしなことが起こる。身の危険を感じるような。誰かに命を狙われてる? ストーキングもされてるみたい?


 彼に話したときの態度に違和感をおぼえる。彼の過去を調べてみると、何人もガールフレンドが事故にあったり、行方不明になったりしている。そのうちの一人に連絡をとろうとするが拒否される。なんだか、みんな、彼をさけているようだ。


 彼には何か変な性癖があり、彼女たちに暴力をふるっていたのだろうか?

 愛する人は、じつは危険人物だった?


 疑いだしたヒロインは、彼の姉に連絡をとり、会ってもらう。彼についての疑念を話すと、姉は泣きだした。


「ごめんなさいね。あなたには話すべきだった。でも、わたしからこんな話をしたとあの子に知られると、わたしが危険だから……」


 絶対に秘密にするという約束で聞きだした。

 姉によれば、やはり、彼は愛する人を殺したくなる願望の持ちぬしで、これまでのガールフレンドに危害をおよぼしたのも彼だった。一日も早く別れたほうがいいと言われる。


 忠告を聞いて、彼との距離を置くヒロイン。しかし、彼からは何度も電話がかかってくる。

 それでもさけていると、職場の前かなんかで待ちぶせされた。言いあいになり、何もかもぶちまけてしまうヒロイン。


「あなたが彼女たちを殺したんでしょ?」

「誰からそんなこと聞いたんだ?」

「お姉さんからよ」


 彼はその場で、彼女の疑念に対し、一つ一つ弁明をし、疑いを晴らしていく。やっぱり彼のせいじゃなかった。わたしは彼を信じると納得するヒロイン。


 すると、後日、彼のお姉さんから呼びだしが。

 姉は別れるよう説得しようとするものの、ヒロインが応じない。

 すると、とつぜん、この姉が豹変した! 丸太だったか、火かき棒だったかで、背後からヒロインをなぐって昏倒させる。


「〇〇(彼の名前)はわたしのものよ」


 なんと! この姉弟、十代のころ、禁断の関係にあったのだ。一度だったのか、数回だったのか、慢性的になのか。そのため、姉は今でもずっと、弟を男として愛していた。


 そこへかけつけてくる彼。


「ヘレン(だったかなんだか忘れたけど、姉の名前。ゾフィーとかかもしれない)やっぱり、おまえの仕業だったんだな! これまで、おれに彼女ができるたびに嫌がらせして、おれから離れるように仕向けてただろ?」

「だって、あなたはわたしの男よ」

「おまえの男なんかじゃない。あのときはガキだったんだ。二人とも未熟で浅はかなガキだった。でも、今は違う。大切なのは〇〇(ヒロインの名前)だ。おまえのことなんて、なんとも思ってない」


 逆上して、彼に襲いかかる姉。完全に意識がなくなってたわけじゃないヒロインは、このようすを全部、見ていた。


「逃げろ! 〇〇(ヒロイン)逃げてくれ!」


 彼が姉を押さえてるうちに逃げだすヒロイン。


 その後、彼とは連絡をとっていない彼女。一度だけ、街なかで彼と再会するものの、おたがいに距離を置いたまま見つめあい、そのまま通りすぎる。



 みたいな映画でした。

 ラストで、駅だったのか、エレベーターが出てきて、それに乗ってあがっていくヒロインと、なぜか、くだりのほうから来た姉がすれちがってにらまれる、ってシーンがあった気がするんだけど。彼と再会した直後だったので、あの姉、まだ弟をストーキングしてるのかもしれない。


 フランス映画には近親相姦ってけっこう多いんですよね。

 フランスっていうか、ヨーロッパの映画っていうか。そのへんの区別はあんまりついてない。そもそもタイトルさえ忘れてるくらいなので。


 でも、忘れられない映画の一つですね。

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