第四世界 数奇なフリージア第十七話
…もう、
自身が起こした四度の失態を…
ただ後悔し、自分に絶望し…立ち止まってしまった。
一度目、少女を助けようとし、少女を化け物に変えてしまった。
二度目、君の母親を奪ってしまった。
三度目、君が助けを求めていた時、僕は君のことなど考えていなかった。
四度目、僕が…僕が楽になろうとしてしまったせいで…君は全てを失い、絶望を与えてしまった。
…僕は、君に助けられたのに。
…僕は君から全てを奪ってしまったんだ。
・・・・・・
静寂が辺りを満たした。
絶望し、折れかかっている真幌に、なんと声をかけてあげたらいいか分からなかった。
…しかし、それよりも先に何かが破裂する様な音が辺りを響かせた。
バァン!!
音の出所をに目を向けると、真幌の頬が赤く染まっていた。
「…君は何をしているの?」
シキさんのその鋭く冷たい一言は、真幌の意思を簡単に折った。
「…ははっ、…そうだね。何してるんだろうね。」
自分に呆れた様に話す真幌に、もう一度シキさんが平手打ちをした。
「もう一度聞くよ。君はなにをしているの?」
シキの言葉の意味が分からなかった。
「何って…僕はあの子の母親を奪ってしまった。…僕はあの子の家族を奪ってしまった。…僕はあの子の最後の希望を折ってしまった。僕は…」
シキを見ると、なぜか僕の中にある後悔が出て来てしまう。
「うん。それで?」
「だから…僕はもう、駄目なんだ。」
シキの目を見るとなぜか、心の中の弱音が引きずり出された。
「…だから立ち止まるの?」
優しい声で、包み込む様な声で、僕にそう問いかけた。…その言葉に頷きそうになった。
僕はもう、心が折れてしまっ…
「ふざけるな!!」
一気に胸ぐらを掴まれ、シキにそう怒鳴られた。
「何が、「もう駄目だ」だ!君は、私に言ったよね!?あの子を…雛ちゃんを助けるって!」
シキのその目は変わらず、まっすぐ僕だけを見ていた。
「それがなんだ!一度、化け物の姿にしてしまったから?一度、家族を奪ってしまったから?一度、心を殺してしまったから?」
胸ぐらを掴む手が、力強く握り締められた。
「それが!お前を立ち止まらせる理由になるかよ!お前が今後悔して、雛ちゃんは救われるのか!?お前が今立ち止まって、雛ちゃんは幸せになるのか!?」
それでも…今もう僕に、立ち上がる力なんて…
「雛ちゃんはまだ生きている。まだ救えるんだよ!…でも、その救えるタイムリミットも、刻一刻と迫って来てる!なのに、なんで今立ち止まれる余裕がある!?」
…あの子は僕なんかに救われない方がいい。
「もう一度言う!私の前で、君が言ったんだろ!?あの子を救うって!」
…それでも
「一度!一度救うと決めたのなら!最後まで救いきれ!!何度失敗しても、何度断られたとしても、足掻いて足掻いて足掻いて、最後まで救いきれ!!」
「ーッ……」
そう言い放つと、シキさんは真幌の胸ぐらを離し、外へと繋がる扉に向かった。
「私は一人でも、あの子を救う。」
そういい、シキさんは扉から外に出ようとした。そして、それに続くようにレンも外に出ようとした。
シキさんが外に出る直前、振り返り蜘蛛に目を向けた。
「おい蜘蛛。君が言った「命を賭してでもあの子を救う」それが本当なら、ついてこい。」
そういいシキさんとレンと蜘蛛は外に出て行ってしまった。
ただその場に座りこんでいる真幌に、享楽が声をかけた。
「真幌さん。僕は、シキさん達がなんと言おうと、悪いのは雛さん達の家族を襲った強盗だと思います。…だからあなたは悪くありません。」
そういい外に繋がる扉に近づいた。
「真幌さんは休んでいてください。…行って来ます。」
他の誰もが行ってしまい、真幌は…静寂に包まれた部屋で、ぽつりとただ座り込んでいた。
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