星降る夜に出会った君と

平 遊

第1話 

 前の年のクリスマスイブに、僕の唯一無二の親友は姿を消した。

 大きなプレゼントを残して。

 彼は姿を消す前に、僕に言った。


『星の綺麗に見える場所がある。来年のクリスマスイブに、そこに行くといい。すぐるにとって生涯忘れられない、大切な場所になるはずだ』と。


 だから僕は彼の言葉を守り、今日、クリスマスイブに合わせてその場所へとやってきた。

 そこは、僕の掛かりつけの病院から少し離れた、小高い丘の中腹あたり。

 そこだけぽっかりと木が生えていなくて空が開けている。

 地面には柔らかな芝生が生えていて、寝転んで空を見上げるには絶好の場所だった。

 だから僕は芝生の上に寝転んで、まるで降ってくるかのように見える、夜空に浮かぶたくさんの星を眺めた。


 暫くの間、僕は星を見る事ができなかった。

 けれども、彼の残したプレゼントによって、見る事ができるようになった。

 僕は星なんて見られなくても構わないからずっと一緒にいて欲しいとお願いしたのだけれど、彼は困ったように笑って首を振るだけだった。


『俺の存在は優にとっては好ましくないんだよ。俺は優には幸せに生きて行って欲しい。この先もずっと、ね』


 彼は、僕以外の人間には怖い存在で困った存在だったのかもしれない。

 でもすべては僕のため。僕を守るためにしてくれたこと。

 僕は小さな頃からずっと、彼に守られて支えられて今まで生きて来たんだ。

 たまに大なり小なりケンカもしたけれど、彼は僕にとって本当に大切な存在だった。

 なのに、突然その彼がいなくなってしまうなんて。


 納得できずに子供のように駄々をこねる僕に、彼は言った。


『優はこれから大切な人に出会うんだ。でも、俺がいたんじゃ、優はその人とは出会えない。その人だけじゃない。優はこれから先、多くの大切な人に出会うはずだ。そこに俺は必要ないんだよ、もう。優は俺がいなくてもちゃんと生きていけるくらいに、強くなったからね。だから、大丈夫だよ』


 彼の言っている事は正しかった。それでも僕は、この先も彼と一緒にいたいと願った。

 だけど、願いは叶わなかった。

 僕は、独りになってしまった。


「できればね、僕はこの綺麗な星空を、君と一緒に見たかったよ、メ……」

「メルロっ⁉」


 静寂な空気を引き裂く素っ頓狂な女の子の声が、突然あたりに響き渡る。

 僕は慌てて身を起こして振り返った。

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