第8話 企み
「
特に「
これが特別な儀式により、別に用意された剣に「心霊がよりつく依り代」として、オリジナルと同等に価値がある者として天皇家に代々受け継がれてきた。
これがいわば「初代草薙剣 (形代)」だ。
しかしその形代は、源平合戦の折に、壇ノ浦にて海に沈んだ。
そのため新しい草薙の剣は、伊勢神宮から献上された。これがいわば「二代目草薙の剣 (形代)」だ。
そしてヒミコ達の話によれば、剣山に、かつて自分たちが用いた「神器」を封印しているらしい。
オリジナルを掘り起こしてもこれだけの年月を経ていればボロボロになっている可能性が高いので、霊力のみを新しい装飾品に宿すのだという。
その話は、俺が家に帰る前に、一旦病室に戻ったときに三姉妹から聞かされた。
そのとき、彼女たちは素のまま……つまり、別人格は現れていなかった。
本人達によれば、「記憶の共有」なのだという。映画やドラマを見たような感じ、というそれだ。
だが、俺も彼女達の両親も、それが本当だとは到底思えない。
「形代」の意味にしても、巫女のアルバイトをしていた彼女たちならば知っていて当然だった。
だが、
「明日にもジュエリーショップに行って指輪かブレスレットを買う」
と決めたことについては、その表情の明るさに、別に悪いことではないと思った。
アルバイトで貯めた小遣いの範囲内で、気に入った物を買って、それで今の沈んだ気分が晴れるならばいいことだ、とも思えた。
彼女たちの両親も反対しなかったし、俺も腕時計が欲しかったから同行すると話した。
空良の
「たっくんは、日向子姉ちゃんになに買ってあげるの?」
という言葉には少し固まってしまったが。
そしてこの時点では知らなかった……指輪などを買ったその日の内に、標高1955メートルの剣山に登頂しようと本気で企んでいたことを。
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