勤勉と怠惰の狭間で

喜島 塔

第1話

「たすけてくれー 更生施設送りだけは勘弁してくれー」


 ボクは、老爺の悲痛な叫びで目覚めた。時計の針は、お昼を少し過ぎたところだった。


「ヒナタサマ、オメザメデスカ? キョウノ、スイミンジカンハ、12時間38分56秒。『新世界法 第二十二条』スイミンジカンノ、キテイヲ、クリアシマシタ」


 二頭身のころんとしたフォルムの管理ロボットが、ボクの一日の記録をするために部屋に入ってきた。


「ねえ、外が騒がしいんだけど、何かあったの?」

「ハイ。ゴキンジョノ、ゴロウジン、ガ、『新世界法 第一条』ノ、キテイヲヤブリ、ソウチョウカラ、ラジオタイソウヲ、シテイタトコロヲ、パトロールロボニ、カンチサレ、ホカク、サレタヨウデス」


 ボクは、まだもやもやとしている頭を抱えながらベッドから起き上がり、のそのそと窓際まで歩を進めた。思わず、アッ、という声がこぼれた。


「ミノルおじいちゃん……」


 ミノルおじいちゃんは、他界したボクのひいじいちゃんの知己で、ボクのことを自分の曾孫のように可愛がってくれた大切な人だ。

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